TACTニュース

No.475 高齢者の住まいをめぐる税金トラブルに注目

2012.02.20

1.老人ホーム入居にともなって

高齢で介護が必要になったなどの理由から老人ホームでの暮らしを選択する高齢者が少なくありません。この場合、自宅を処分するかどうか、老人ホームの入居資金をどうするかといった問題が顕在化します。

2.自宅の処分問題でトラブル

600㎡超の敷地を持つ邸宅に住んでいたAさんは、一人暮らしが難しくなったため介護付老人ホームでの生活を望んで平成13年に老人ホームに入居しました。その後、Aさんは平成21年にこの邸宅を売却、その際、譲渡所得税の特例3,000万円控除を適用したとき税務当局とトラブルになりました。争点は、売却した邸宅が3,000万円控除の適用を受けられる「居住の用に供している家屋」に該当するかどうかというものです。Aさんは国税不服審判所に判断を仰ぎました。

審判所は、資料等から邸宅の電気使用量等を確認。たとえば電気使用量については、平成17年中は、各月3キロワットないし9キロワット、平成18年から21年4月までは各月0ないし1キロワットだった事実を認定しました。また審判所は、老人ホーム入居後Aさんがこの邸宅にいたのはわずかな日数だったことを認め、結論として、この邸宅は3,000万円控除の適用を受けられる居住の用に供している家屋等ではないと判断しています(平成23年6月9日)。

直近の類似事例に、老人ホームに入居後空家にして3年以上経った自宅を売却した際、同特例を適用して申告したケースで、当局の否認が支持されたケース(平成20年3月12日裁決)があります。税務上の争点は「“自宅”が特例対象の家屋かどうか」という比較的分かりやすいにもかかわらず繰り返し争いになっている現実には注目する必要がありそうです。同種の問題に直面する方がまだまだ増えると予想されるからです。

3.夫婦で行く豪華老人ホームの費用に贈与税?

Bさんは、病気の夫と施設利用権付有料老人ホームの入居することとし主契約者となりましたが、一緒に入居する追加契約者の夫が、Bさんの入居金のかなりの部分を払いました。その後夫は3年も経たず他界。相続税の申告では、夫負担の入居金には課税されないものとして申告しませんでした。しかし当局から入居金は相続開始前3年以内の贈与に当たり相続税の申告漏れだとの指摘を受け、結局、国税不服審判所での争いとなりました。

この事案には、①本来の主契約者は誰か、②贈与の対象となった財産の認定に関わる入居金の法的性格はどのようなものか、などといった論点がありましたがそれらは割愛して、入居金のうち、夫がBさんの入居のために使うこととなるお金にしぼって話を進めます。 

Bさんは、夫婦で入居するため夫が負担する費用だから少なくとも贈与税が非課税になる「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの(相続税法21条の3第1項第2号)に該当する、よって相続税の申告に含めるべきものではない」と主張しました。

国税不服審判所は、まずBさんが夫から金銭贈与を受けて施設利用権を取得したと整理。続いて審判所は「相続税法21条の3第1項第2号(中略)の立法趣旨にかんがみれば、生活費に該当するか否かの判断は(中略)個々の具体的事情に即して社会通念に従って判断すべき」とした上で、問題の老人ホームについて次のような事実を確認。①入居金が高額、②居室が広い、③共用施設にレストラン・ラウンジ・大浴場など多数、④医療支援・食事サービス・生活助言・文化・レクリエーション支援などサービスが充実、無料サービスもある・・・。こうしたことから審判所は、「利用権取得のための金員は社会通念上、日常生活に必要な住の費用であるとは認めることはできない」としてBさんの申立を退けています。 

(遠藤 純一)


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