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近隣の工場等が他の用途へ変わると土地の相続税評価額に影響することも

2025.12.23

保有する土地の周辺の状況が変わると、土地の相続税評価に何らかの影響を受けることがあります。

たとえば、工場跡地に商業施設が建築されたような場合が一例です。というのも、市街地にある土地の相続税評価の主な評価方法である「路線価方式」では、「地区区分」が見直されることがあるためです。

地区区分とは、利用状況ごとに区分されたもので、
1.ビル街地区
2.高度商業地区
3.繁華街地区
4.普通商業・併用住宅地区
5.普通住宅地区
6.中小工場地区
7.大工場地区
の7種があり、都市計画法上の用途地域とは異なる区分で、国税局長が、財産評価のために定めるものです。
土地の相続税評価で違いが出るのは、土地の形状などの違いに応じて行う「補正」です。

路線価は、具体的には主に市街化の進んだ地域において、道路ごとに付けた「その年の1月1日時点の土地1㎡当たりの価額」のことをいいます。その年の1月1日時点の公示地価など公的土地評価額との関係では、そのおよそ80%をめどに計算されています。

これを基に、実際に評価する個別具体的な土地の間口や奥行、接道状況などで補正をして、評価額を求めることになっています。
簡単に計算式で表すと「路線価×補正率×地積」となります。この補正の値が、「地区区分」で異なるところがあります。

たとえば地区区分の「中小工場地区」が商業施設ができることに伴い「普通商業・併用住宅地区」に変更されると、土地の奥行に応じて補正する値である「奥行価格補正率」も一部、差が出てきます。

奥行12m以上20m未満においては、「中小工場地区」では0.97~0.99と引下げの方向で補正されるのに対し、「普通商業・併用住宅地区」では同じ奥行きでも補正の値は「1.00」、つまり補正がありません。したがい、このような「地区区分」が見直されると、同一地区に所在する土地の相続税評価が変動するということになるのです。

東京国税局などでは、路線価による土地評価をより精密にするため、道路の新設、大規模マンション屋大型店舗、公共施設などの建築といった情報を「探聞情報資料せん」という書面にして収集しています。これにより、必要に応じて「地区区分」の見直しを行っているのです。

保有不動産の近隣状況の変化には、注意を払っておきたいものです。

[ 遠藤 純一 ]

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