賃金変わらず再雇用の医師への一時金めぐり争い 審判所、退職金と認定、源泉所得税等の追徴を取消す
医療関係の人材の少ない地域で病院を経営する法人が、定年を過ぎても勤務していた医師らに対し、勤務内容、賃金等をほぼ変えず再雇用したことにともない支払った一時金について、税務上、退職金になるのか給与なのかが争われた事例のあったことがわかりました(国税不服審判所令和7年7月25日裁決)。
これは情報公開制度で明かになったものです。
国税不服審判所(以下、審判所という。)は、一時金が税務上、退職金に該当するものと認め、税務署の行った源泉所得税の納税告知・不納付加算税の賦課処分(源泉所得税等の追徴)を取り消しました。
ポイントは、再雇用後の勤務内容や賃金に変化がないと見られた関係について、①就業規則の変更に伴うものだったこと、②後任の人材不足などを背景に、勤務内容などを維持する相当の理由があったと認められ、退職給与と認められる要件を満たすとされた点です。
裁決書によると、問題になった一時金は、旧規定の定年60歳を超えて勤務等していた医師がいったん退職し、1年更新の有期雇用契約で再雇用された際に支払われたものです。再雇用では、これまでと同じ役職、業務等を同水準で引き続き担うことを前提に、直近の年収を保証すること、年次有給休暇については、雇用が継続しているものとして付与すること、福利厚生
制度等は、基本的にこれまでと同様の取扱いとしていたことが争いの火種となりました。
法人は、一時金を退職所得として、所得税の源泉徴収等をしていましたが、所轄税務署はこの一時金につき、賞与だと認定して源泉所得税等の追徴を行ったことから、審判所での争いとなったものです。
審判所は、退職所得に関する所得税の規定から、一時金が「退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与」に該当するかどうかは、「①退職、すなわち勤務関係の終了という現実によって初めて給付されること、②従来の継続的な勤務に対する報償又はその間の労務の対価の一部の後払の性質を有すること、③一時金として支払われること」が必要としたほか、「形式的には①から③までの各要件の全てを備えていなくとも、実質的にみてこれらの要件の要求するところに適合し、課税上、「退職により一時に受ける給与」と同ーに取り扱うことを相当とするもの」であれば、退職金と認められるとの判断基準を説明しました。
たとえば外形的には継続している勤務関係の場合は、実質的には単なる従前の勤務関係の延長とはみられないなどの特別の事実関係があることを要するとも述べました。
これを踏まえ審判所は、医師らにつき、概ね次のような検討をしました。
1、再雇用期間の職務について退職金の支給はないことを併せ考えると、再雇用契約は、同年3月31日までの雇用契約とは雇用形態の法的性質が大きく異なる。
2、再雇用契約前と同樣の業務を行い、賃金の総額にも大きな変動等はなかったが、医師等の人材も不足していたことに照らせば、病院等の運営のために、再雇用契約前の業務等で勤務させなければならないことに相当の理由があり、従来の勤務関係が終了していないとみるのは相当ではない。
3、一時金は、旧給与規則に基づき、基本給等の金額を基準に、勤続期間に対応する金額として算出されており、医師のこれまでの勤務に対する報償又はその間の労務の対価のー部の後払の性質を有するものと認められる。
審判所は最終的に役付きだった医師を含む4名に支給された一時金は退職金に該当すると判断、源泉所得税等の追徴を取り消しています。
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