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今度は土地活用が評価通達6項の標的に 審判所、建物を鑑定価額で再評価した税務署を支持

2025.11.10

不動産を相続して財産評価基本通達(以下、評価通達という。)通りに評価して申告等していた長男や孫らが、財産評価基本通達6項(以下、6項という)の適用により、税務署から鑑定評価額による再評価・更正処分を受けた事例がありました。
これは情報公開により分かったものです(国税不服審判所令和7年6月18日裁決)。

ポイントは、(1)祖父から被相続人が承継していた土地等の有効活用で建築された賃貸建物が6項による再評価の標的となった点、(2)相続開始の約5年前から行われた不動産・賃貸建物の取得と金融機関からの借入が6項の適用に当たり考慮対象の事情となった点です。最高裁令和4年4月19日判決の事案では、問題視された行為は相続開始前約3年5か月から行われたものでした。

本件では、相続税の当初申告は平成31年1月25日とされており、仮に相続開始は最長で申告10か月前とするとおよそ平成30年3月ごろとなります。不動産等の取得・借入れは平成25年1月から平成28年3月、契約日ベースでは平成24年11月からとみられる時期から3年でした。すなわち相続開始の約5年前からの被相続人やこれを主導した長男の行為が問題となったのです。

取得したのは、祖父から承継した土地などの「土地活用のため」などで借入により建築した賃貸住宅12件のほか、売買で入手した賃貸マンション3件と賃貸住宅2件(1件は建物のみ)。全部で17件を長男と孫が相続したケースです。

再評価の対象となったのは、マンション3件と賃貸住宅1件は土地建物合わせた評価額、加えて、残り13件の建物の評価額でした。令和3年から行われた税務調査で税務署が把握したところによると、不動産の取得価額の総額は約20億円で、上記不動産の評価は、評価通達通りなら約7.9億円、相続開始時の借入残高は約18.9億円、通達評価額を超過して他の相続財産の課税価額を圧縮する金額は約11億円だったということです。

相続人らは上記不動産について評価通達通りの評価額で相続税の申告をしましたが、所轄税務署は上記の税務調査により令和5年6月までに評価通達6項により上記不動産を鑑定評価した金額約16.8億円(マンション3件と賃貸住宅1件は土地建物合わせた鑑定価額、残り13件は建物価額のみの鑑定価額)になることを説明しました。相続人らは、いったん約14億円で修正申告しましたが、税務署は鑑定価額で更正したため、鑑定評価額等に不服があるとして国税不服審判所(以下、審判所という)に審査請求したということです。

争点は、主に①評価通達の定める方法によって評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情があるか否か、②鑑定評価額が、相続税法第22条に規定する時価を上回るか否か(過少申告加算税の賦課決定の理由付記が不十分かどうか、過少申告となったことに正当な理由があるかどうかの争点もあありましたが割愛します。)

審判所は、争点①について、評価通達6項の適用に関し、最高裁令和4年判決の考え方を受け継ぎ「評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合には、(中略)当該財産の価額を評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものすることが平等原則に違反するものではない」とした上で、次のような事実関係を認定・指摘しました。
1、上記不動産の取得・借入が行われたことにより、相続税の総額は、割合では約80%減少することから、相続人らの本件相続税の負担は著しく軽減されたと認められること
2、被相続人は、金融機関と相談した長男からのサポートで、金融機関からの借入れを原資として、3年程度という短期間のうちに合計17件もの不動産を順次取得したこと。
3、取得した不動産はいずれもの賃貸用物件であること。

以上などを踏まえ審判所は「被相続人は、高齢となってから、自ら又は親族の生活上の必要が特段ない状況下で、短期間のうちに少なくない数の不動産を新たな借入れによって取得したことになり、このような被相続人による取得・借入れは、収益を得る目的のみに基づくものではなかったというべき」としました。
最終的に、審判所は相続税対策をしなかった納税者と著しい不均衡を生じさせ、実質的な租税負担の公平に反する事情があると判断、評価通達6項の適用を認めています。

争点②鑑定評価額が、相続税法第22条に規定する時価を上回るか否かについては次のとおり。
審判所は「実質的には収益還元法による収益価挌を標準とし、原価法による積算価格を比較考量して、貸家及びその敷地としての価格複合不動産価格を決定し、次いで、当該複合不動産価格を建物と土地に配分して建物部分の価格を求めた上で、各鑑定評価額を決定しており、当該手法も、不動産鑑定評価基凖に従った相当なもの」として最終的に「本件各鑑定評価額が、相続税法第22条に規定する時価を上回るとは認められない」と判断しています。

[ 遠藤 純一 ]

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