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寄宿舎から民泊への転換で増税された固定資産税 廃業だけでは住宅として減税されず

2025.09.29

海外からの旅行客増加でホテル・旅館業界の売上は全体として上昇中ですが、採算などの経営課題を残して廃業するケースもあるようです。

こうした中、都内で寄宿舎を持っていた人が民泊(ホテル)に転換したら、固定資産税・都市計画税(以下、固定資産税等という)の税額が大幅アップ。
そこで採算面を考えてか、この人は民泊を廃業し固定資産税等の負担を減らそうとして、行政不服審査で争いました。

ところが東京都は、廃業しただけでは住宅として固定資産税等の減税は認められないとする裁決を下しました(東京都裁決・令和7年1月31日)。

寄宿舎は、食堂やふろ場などの共同施設と居住部分がある建物で、住宅と同様に「人の居住の用に供する家屋」のカテゴリーの含められる建物です。
このため、その敷地は「住宅用地」に該当し、その課税標準は住宅1戸当たり200平米まで6分の1になる固定資産税の住宅用地の課税標準の特例(都市計画税は3分の1、以下、併せて住宅用地の特例という。)の適用が受けられます。

しかし、ホテルとなると、建物は「人の居住の用に供する家屋」ではなくなるため、「非住宅用地」として、住宅用地の特例の適用は受けられなくなります。
この結果、土地の固定資産税等の負担は数倍に増税されます。

裁決書によると、東京都の都税事務所は、宅地が寄宿舎の敷地だったころは税額が低廉になる「住宅用地」と認定していました。しかし所有者が寄宿舎を民泊に転換した際、東京都の課税部門はホテルとしての使用を確認、令和3年度の固定資産税等については、敷地について住宅用地の特例の適用を見送って賦課しました。

ところが税負担増を嫌ってか、所有者は同年中に廃業届を管轄行政部門に提出し、翌年度分の固定資産税等につき、住宅としての税額に戻すよう審査請求に打って出たということです。

審理した東京都の審査庁は、固定資産税等における住宅認定に当たり、東京都の取扱いで次のようになっていることを指摘しました。

「賦課期日現在、現に人が居住していない家屋であっても、当該家屋が構造上住宅と認められ、かつ、当該家屋の居住部分が居住以外の用に供されるものでないと認められる場合であれば、住宅に含めるとしている」

しかし、審査庁は上記ホテルの現況について「賦課期日において現に人が居住していない家屋である」が、「休業中との表示があること、依然としてホテルとしての外観を呈していることからすれば、本件家屋は、構造上住宅と認められない。」と認定。

また「廃業後に居住の用途として使用されたことがあると認められない以上、本件家屋が居住以外の用に供される可能性を否定でき」ないとして、最終的にこの敷地が住宅用地にならず、非住宅用地だと判断して減税を認めませんでした。

[ 遠藤 純一 ]

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