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土地建物の内訳を固定資産税評価額比であん分するも 同族会社から不動産を買った取締役に税務署から追徴の事例

2025.08.12

当事者が消費税の課税事業者であっても契約までの交渉において土地建物一括での売買価額に合意はできたものの、建物のそれぞれの価額を契約書に明示していない場合があります。

この場合は税務上、合理的に売買代金を土地と建物の価額に分ける必要が出てきます(消費税法施行令45条3項、消費税基本通達10-1-5)。

というのも土地の譲渡は消費税が非課税でも、建物の譲渡は消費税がかかるからです。消費税の税額計算においても建物の価額を算出することが必要になっているのです。
具体的なあん分方法としては、①譲渡時における土地および建物のそれぞれの時価の比率によるあん分、②相続税評価額や固定資産税評価額を基にしたあん分、③土地、建物の原価(取得費、造成費、一般管理費・販売費、支払利子等を含む。)を基にしたあん分があります(国税庁タックスアンサー№6301)。
このうち最もよく利用されるのは、土地建物の固定資産税評価額の比であん分する方法です。

ところが最近、売買において土地建物の価額あん分が不合理と認められる場合、税務署がより売買代金を合理的な土地・建物の価額にあん分し直して、消費税の増額更正処分をするケースが出てきています。

たとえばオーナー取締役が、経営する同族会社から土地建物を一括での税込み価額17億円とだけ記載し譲り受けたケースがそれです(国税不服審判所令和 6年12月13日裁決)。
オーナー取締役自身が個人事業主として個人事業者としても不動産賃貸業を営んでいることから、不動産を仕入れたのです。
具体的には、オーナー側は固定資産税評価額の比(土地49.3対建物3棟50.7)であん分し、課税仕入れに係る消費税額を計算し、仕入れに係る消費税額が大きくなったため還付申告していました。

ところが税務調査で、譲渡した同族会社の方では不動産鑑定評価額により土地68.9対建物3棟31.1の割合で価額あん分し、課税売上に係る消費税額を計算していたため、税務署が取締役の方の消費税計算も不動産鑑定の評価額であん分し直し、消費税の更正・追徴をしたという事例です。

この取締役は、税務署の更正処分等を不服として、最終的に国税不服審判所(以下、審判所という)に税務署の処分の取り消しを求めて審査請求しました。
結論から先にいうと、国税不服審判所は、次の理由から税務署の更正処分等を支持する裁決を下しています。
①オーナーと取引した同族会社で行われた不動産鑑定評価について不合理な点はなく、鑑定書の付記事項とされた物件の内訳価格(土地及び各建物の各評価額)も適切に算定されている。
②上記鑑定にA社の取締役として関わっていたオーナーは、鑑定士から鑑定書の内容について報告を受けていたことからすれば、この売買に係る取引額は付記事項も踏まえて合意されたと認めるのが相当。
③売買における時価として個別事情を考慮した適正な鑑定によって固定資産税評価額と異なる評価がされ、価額比においても実質的な差異が生じているのであるから、もはや固定資産税評価額による価額比を用いてあん分する合理性を肯定する根拠は失われているというべきであり、建物の課税仕入れに係る支払対価の額を算出するに当たっては、鑑定評価額による価額比を用いてあん分し、課税仕入れに係る支払対価の額を算出することが相当。

この裁決のポイントは、「一括して譲渡された土地及び建物の対価の額をあん分する方法として、当該資産の客観的な交換価値を上回らない価額と推認される固定資産税評価額による価額比を用いることは、一般的には、その合理性を肯定し得ないものではないが、当該資産の個別事情を考慮した適正な鑑定が行われ、その結果、固定資産税評価額と異なる評価がされ、価類比においても実質的な差異が生じた場合には、もはや固定資産税評価額による価額比を用いてあん分する合理性を肯定する根拠は失われるというべき」との考え方を示している点です。

この考え方により、オーナーの「土地と建物の価額を算出する方法として固定資産税評価額の比を用いることが一般的で最も多いし、本件物件に係る固定資産税評価額は違法なものではないのだから、固定資産税評価額比率によって算定すべき」との主張を退けています。

[ 遠藤 純一 ]

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