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生命保険契約の代理・媒介を行う外交員の業務は代理業 東京地裁、個人事業税の課税認める

2025.04.21

生命保険会社のために契約の代理等を行う保険外交員の業務が個人事業税のかかる「代理業」に該当するかどうかを巡って争われた裁判の判決が3月4日、東京地裁でありました。
東京地裁は、同業務が「代理業」に当たるとして東京都の各地の都税事務所の課税処分を支持、生保外交員らの訴えを退けました。

判決によると、問題になったのは、生命保険募集人の登録を受けていた外交員である原告らが、生命保険会社との間で契約期間を1年間とし、その生命保険会社ために「専業の生命保険募集人としての仕事を行うこと」等を任務とし、その対価として「歩合制報酬の支払を受けることを約する旨の契約」などを締結して行った業務です。
同人らは令和3年又は令和4年頃まで契約を更新しており、収入金額(歩合制報酬)に係る事業所得等について、令和3年分当の所得税等の確定申告書などを提出していました。

これに対し、東京都の渋谷都税事務所長らは、外交員らの業務が個人事業税のかかる代理業に当たるとして、個人事業税を賦課したのに対し外交員らは不服申立を経て提訴していたものです。

争点は、大まかに①生命保険会社の代理権を有しない者が行う取引の媒介業務が「代理業」に当たるか否か、②生命保険会社の使用人が行う上記業務が「代理業」に当たるか否かの2つです。

東京地裁は、地方税法では個人事業税の課される第一種事業として「代理業」(地方税法72条の2第8項23号)等が限定的に掲げられているが、「代理業」の定義が特段規定されていないこともあり、「反対の解釈をすべき特段の事由がない限り、商人の営業、商行為その他商事について規定する法律である商法(同法1条)の規定を整合的に解釈することが相当」としました
また、事業性について東京地裁は、最高裁昭和56年4月24日判決を引用し、所得税法上の事業所得に関する上記の解釈を踏まえるなどすれば、最終的に「「代理業」とは、自己の計算と危険において独立して反復継続的に営まれる事業であって、手数料等の報酬の収得を目的として、一定の商人のために、その平常の営業の部類に属する取引の代理又は媒介をするものであると解するのが相当」と判示しました。

東京地裁はこれを踏まえ、争点①生命保険会社の「代理権を有しない者が行う取引の媒介業務が「代理業」に当たるか否か」につき「「代理業」の文理解釈に当たって商法の総則の規定である同法27条を参酌することは、当然に許されるものと解」されるとしました。
次に争点②の「使用人が行う上記業務が「代理業」に当たるか否か」について東京地裁は「商人の使用人が使用人として行う業務が「代理業」に当たる場合があるとしても、そのことをもって、文理解釈として不合理であるなどということはできない」として外交員らの主張を退けました。外交員らはこれを不服として控訴しています。

[ 遠藤 純一 ]

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