みなし償却資産課税制度の節税封じ 令和7年度税制改正では見送り
建物の付帯設備の範囲を拡張し、みなし償却資産の対象として建物から分離、固定資産税などの節税を行う手法が注目されていましたが、その牽制・防止策については令和7年度の税制改正において盛り込まれませんでした。
総務省自治税務局固定資産税課によると「同法令の改正は税制改正大綱に記載すべき事項」であるとして令和7年度税制改正での改正は見送ったとしています。
みなし償却資産課税制度とは、①家屋の所有者以外の人がその事業の用に供するため取り付けたもので、②その家屋に付合したことにより家屋の所有者が所有することとなった付帯設備が、③取り付けた人の事業の用に供することができる資産である場合に限り、取り付けた人の方で家屋以外の特定付帯設備として固定資産税(償却資産税)の対象とすることができるという制度です(地方税法343条10項)。
同法を受け、地方税法施行規則第10条の2の15では、建具などのものも含むとして定められていますが、法令上、付帯設備の範囲を限定しているわけではありません。
もともとこの制度は平成16年度税制改正で導入されたもの。固定資産税では本来、付帯設備が家屋に取り付けられた場合、民法の附合(242条)に規定により、通常は付帯設備の所有者も家屋の所有者になり納税義務者になります。
ただし、家屋の所有者と付帯設備を取り付けた人が異なる場合には、付帯設備の所有者を取り付けた人とすることができます。
こうしたことを受け、家屋の所有者から店舗を借りて内装その他の設備を取り付け、賃借終了に際し現状回復するようなケースでは借家人の資産とする方が取引の実情に即しているといった事情から、特定付帯設備のみなし償却資産課税のしくみができたわけです。
ところが最近、この制度を利用し、エレベーターや給排水設備などまでを特定付帯設備とする手法に注目が集まり、家屋の所有者が、自身の同族会社への家屋の貸付で上記のしくみを利用すれば、特定付帯設備部分は同族会社の方で、家屋よりも償却を進めることができ、固定資産税(償却資産税)の軽減も狙えるといった動向が広がりを見せてきたとされます。
固定資産税の研究機関である固定資産評価システム研究センターでは昨年、令和6年度の「地方税における資産課税のあり方に関する調査研究委員会~家屋の附帯設備に係る固定資産税の課税制度のあり方について~」の中間取りまとめを公表し、上記の節税策に行き過ぎが見られるなどと指摘していました。
このため、同取りまとめでは、エレベーターや給排水設備などまで特定付帯設備を拡張し、行き過ぎた節税を防止するため、法令上家屋として課税すべきものの範囲を明確化すべきとの意見が出されていました。
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