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離婚に伴う住宅の名義変更で不動産取得税にご用心

2025.03.24

離婚は3組に1組の割合といわれるように身近になっています。ベテラン夫婦の離婚では、財産分与や慰謝料の代物弁済などとして、住宅の名義変更をする場合も少なくないようです。ここで注意したいのが、不動産取得税です。
離婚に伴う住宅の名義変更が「不動産の取得」とされ、不動産取得税が課税される場合があるからです。

本欄では以前、財産分与に伴う住宅の名義変更について、不動産取得税の課税がなされる場合について紹介しました。
今回は、①住宅の取得がそもそも課税原因となるかどうかの判断ポイント、②住宅の取得における負担軽減措置の適否のポイントについて、最新事例に基づき、まとめました。

①財産分与で不動産取得税が課税対象になるかどうかのポイント
令和6年後半の東京都の行政不服審査で、離婚に伴う住宅の財産分与を巡り、不動産取得税の課税対象になるかどうかが争われた審査請求事案が複数ありました(令和6年9月5日裁決・令和6年12月24日裁決)。

財産分与とは、当事者一方からの財産を分ける請求に基づき離婚から2年以内に行われるもの(民法768条)。これにより住宅の名義を変更した場合、不動産取得税の課税される「不動産の取得」となるかどうかのポイントは、住宅が「夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定」されるもの(民法768条)であるかどうか。
その根拠は、東京地方裁判所昭和45年9月22日判決で、「夫婦の共有に属するものと推定される財産(民法762条2項)についてなされたものである限り、形式的に財産権の移転が行なわれることはあっても、当然の所有権の帰属を確認する趣旨にすぎず、これによって実質的に財産権の移転が生じるものではないと解するのが相当」とされ、課税されないとされているためです。
もっとも共有ではない住宅の場合には、「離婚に対する慰藉または将来の扶養」を目的とする財産分与であれば課税原因に該当することになります。

令和6年12月24日裁決では、次の事実を指摘して、「離婚に対する慰藉または将来の扶養」を目的としない特段の事情が認められないため、不動産取得税が課税されるとしています。
(1)結婚前に元夫が購入していた住宅が財産分与で名義変更されるまで登記名義人は元夫であったこと
(2)住宅を分与された元妻(審査請求人)は、「登記簿上の権利状態とは異なり、婚姻中に無担保の住宅ローンを組み、請求人らが共同して返済を完了させたものであるから、請求人らの共有財産」と主張するが提出された資料からは「夫婦いずれに属するか明らかでないため夫婦の共有に属するものと推定される財産」であったことを裏付ける証拠は認められなかったこと

②住宅の取得における負担軽減措置の適否のポイント
熟年離婚で慰謝料の代物弁済と見られる住宅の名義変更について、対象の住宅に不動産取得税の負担軽減措置が適用できるかどうかで争いとなった事案も最近、東京で裁決がありました(令和6年8月8日)。

不動産取得税の住宅に係る負担軽減措置とは、A住宅家屋の課税標準の特例と、B住宅用土地の軽減措置です。
Aの特例は住宅の評価額《固定資産税評価額からその住宅が建築された際に施行されていた控除額(最高1200万円)を控除するもの》です。
Bの特例は、その上に建てられている住宅がAの特例適用がある住宅の敷地であれば、一定の税額軽減措置がうけられる制度です。

今回の裁決で問題になったのは、住宅が中古住宅として、上記Aの適用要件である耐震基準適合既存住宅であることを満たすかどうかが争点となったものです。
その要件とは昭和57年1月1日以後に新築されたものであること(1号)、同条2項の基準(耐震基準)に適合することにつき総務省令で定めるところにより証明がされたものであること(2号)のどちらかです。

事例によると、名義変更された住宅は、昭和51年11月23日に新築されたものだったため、耐震基準適合するかどうかの調査日等が取得日の前2年以内の証明書類の提出が求められていました。
しかし、名義変更を受けた納税者から最終的に提出はなかったことから、上記のA、Bの特例措置の適用はないとの判断が下されています。

名義変更する住宅が不動産取得税の住宅の負担軽減措置の適用が問題になる場面としては、上記のほか、ベテラン夫婦間で行われる住宅等の贈与で、贈与税の非課税の特例(2000万円配偶者控除)を適用する際にも起こりえます。住宅の築年数が長い場合には要注意といえます。

[ 遠藤 純一 ]

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