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家賃は非課税でも、賃貸住宅を売却した時には消費税が課税に

2025.02.25

不動産賃貸事業の継続する中で一部の賃貸住宅そのものを売却、あるいは不動産賃貸事業からのため賃貸建物を売却した場合には、建物部分の売却に関しては消費税がかかるとされています。

その理由は法令に「資産の譲渡等には、その性質上事業に付随して対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供を含むものとする」(消費税法施行令2条3項)との定めがあるため、とされています。
この「事業に付随して対価を得て行われる資産の譲渡」等の具体的な中身とはどんなことでしょうか?

以前、次のような事例がありました。

建築業及び不動産賃貸業を行っていた個人が建築業を廃止し、法人なりした後、その法人に建築業の用に供していた建物を譲渡したことが、建築業の事業活動の一環として、又はこれに関連して行われた、付随行為に該当するかどうかが争われた事例です(平成14年10月8日裁決)。

事実関係のポイントは、(ア)法人を設立するまでは、問題の建物を建築業の用に供していたこと、(イ)法人設立後、譲渡までの間は、その建物を法人が無償で使用していたこと、(ウ)不動産賃貸業は法人設立前後に変わりなく営まれていたことの3点。なお、この譲渡については、納税者の消費税申告がなかったため、一部の事業が廃止されても個人により不動産賃貸業が継続していることを前提に、税務署から更正処分・過少申告加算税の賦課決定処分(追徴)が行われています。

追徴の取消を求める納税者は、(1)「建物の譲渡の時点では、不動産所得の計算上減価償却費などの必要経費を計上しておらず、事業の用に供していなかった」、(2)「事業を廃止した場合、当該事業の用に供していた資産は、事業の廃止に伴って事業用資産に該当しないことになる一方、家事のために消費し、又は使用した」ものとして取り扱われる。個人の課税事業者に課税売上げにはならない」と主張しました。

これに対し審判所は、問題の譲渡について次のように判断して個人として行っていた建築業の付随行為としました。

①通常、法人成りをするに当たって、その有する事業用資産を法人に引き継ぐ方法として、現物出資、譲渡、賃貸借又は使用貸借等によって、権利の設定又は移転が行われることからすると、請求人が法人成りを契機として個人事業(ここでは建築業)を廃業したというためには、その有する事業用資産の法人への引継ぎが終了し、事業の清算が結了することが必要と解される。
②譲渡は法人成り及び請求人が個人で営む建築業を清算するための一過程であると考えられるから、譲渡によって初めて法人成りが完成し、請求人の個人として営む建築業が廃業されたものと見るのが相当である。

なお、審判所は、問題の建物が不動産賃貸業に供されていなかったことから、この譲渡について不動産賃貸業との関係はないとも指摘し、個人による不動産貸付業の範疇で譲渡されたとする税務署の考え方を否定しています。

事業の付随行為としての事業用不動産の譲渡で消費税が問題になる場合とは、継続して行ってきたその事業の用に供していた不動産を売るときといえます。
参考までに付け加えますと、東京国税局の「所得税・消費税 誤りやすい事例集」(令和5年12月)」によると、家賃に消費税が課税されない賃貸住宅を譲渡した場合でも、「事業用資産の譲渡」に当たり消費税がかかるとしているほか、事業に使っていた自動車を下取りした場合でも同様に消費税がかかるとして、消費税の申告に当たり注意喚起をしています。

[ 遠藤 純一 ]

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