ごみ集積所に隣接する土地の相続税評価 「10%評価減」が認められなかった事例
ごみ焼却場などの忌避施設に隣接する土地を相続した場合、相続税の土地評価においては、いわゆる10%評価減の取扱いの適用が検討されることがあります。
国税不服審判所(以下、審判所という。)の最近の裁決事例には、「ごみ集積所」に隣接した土地を相続した人が、10%評価減の取扱いの適用があるのではないかとして、審査請求したケースがありました(令和6年9月17日)。
「10%評価減」の取扱いとは、付近の土地の利用状況と比較して著しく利用価値が低下している土地の部分に適用できるものとされています。
国税庁のホームページでは例示として次のように記載があります。
(1)道路より高い位置にある宅地又は低い位置にある宅地で、その付近にある宅地に比べて著しく高低差のあるもの
(2)地盤に甚だしい凹凸のある宅地
(3)震動の甚だしい宅地
(4)(1)から(3)までの宅地以外の宅地で、騒音、日照阻害(建築基準法第56条の2に定める日影時間を超える時間の日照阻害のあるものとします。)、臭気、忌み等により、その取引金額に影響を受けると認められるもの
裁決によると、10%評価減の適用が検討されたのは4つの土地で、いずれも接道する公道上に、ごみ集積所が設置されていたものです。
相続人は「土地がごみ集積所に隣接していることは、美観が害されること及びごみ集積所から臭気が発生することから土地の利用価値を薯しく低下させているため、本件取扱い(10%評価減のこと、筆者注)により減額して評価すべきである」と主張しました。
これに対し審判所は、「路線価」について次のような考え方を示しました。
「宅地の価額がおおむね同一と認められる一連の宅地が面している路線ごとに設定するとされ、具体的には、「路線に接する宅地」で、その一連の宅地に共通している地勢にあることなどの事項に該当するものについて、売買実例価額、公示価格、不動産鑑定士等による鑑定評価額、精通者意見価格等を基としてその路線ごとに評定した1平米当たりの価額とされている」
これを踏まえ審判所は、①相続した土地の所在する自治体におけるごみ集積所の設置については一定のルールのもと、相続した土地の所在する地域に限らず、一般的に設置されているものであること、②公道等の場所で収集作業や清掃車の通行に支障がない場所が選定されていること、➂相続した土地に法的な利用制限があるとは認められないことなどを指摘。
「ごみ集積所に隣接しているという事情は付近にある宅地と比較検討しても宅地の取引価格に影響を与えるとは認められない」として、10%評価減の適用をすべきでないと判断をしています。
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