国外転出時課税制度の直近の適用状況 出国で納税猶予中は248件に
国税庁の開示資料によると、出国に伴う国外転出時課税の納税猶予制度の適用件数が、令和5年7月1日から令和6年6月末まで(令和5事務年度といいます。)の1年間に113件と、制度発足以来初めて年間100件を超えました。
また1年間に発生した猶予税額は1,365.4億円になり、初めて1,000億円の大台を超えました。
一方、継続して納税猶予の適用がある件数は、令和6年6月時点で出国に伴う納税猶予が248件に上り、過去最高となっています。
国税庁によると令和6年6月末時点の納税猶予の継続管理件数は次の通りです。
課税の場面ーーー件数ーー猶予税額
①出国ーーーーー248件ーー約1568.3億円
②贈与ーーーーー35件ーーー約6.4億円
③相続ーーーーー7件ーーー約4.5億円
国外転出時課税制度とは、一定の有価証券の売却益の課税逃れを防止するため生まれた制度。
国内で行われる有価証券の売買なら本来その譲渡益に対して課税されます。
しかし有価証券の譲渡益に対し非課税としている外国へ出て、そこで有価証券を売却するなどして譲渡益に対する課税を逃れる事例が見られたことから、国際的な協調でこれを防ぐために新たに作られました。
具体的には、合計で1億円以上の所定の有価証券等を保有する資産家が対象者となる税制です。
課税が問題になる場面は、次の3場面です。
①居住者が、国外へ出て国内に住所が無くなる(いわゆる出国)場合
②居住者の保有する有価証券等を国外にいる子弟等(非居住者の親族等)へ贈与する場合
③居住者の死亡で有価証券等が国外にいる子弟等(非居住者の親族等)に相続・遺贈される場合
この時、保有する有価証券等の譲渡があったものとしてその含み益に譲渡所得税が有価証券等の保有者である居住者または被相続人に課税されるものです。
このため、納税猶予の制度が設けられています。猶予期間は5年間で延長の届出をすると最高出10年間、猶予できます。
たとえば資産家本人が国外転出する場合、出国するまでに「納税管理人」を決めて税務当局に届出をしておくと、国外転出時課税制度で負担すべき税額の納税を猶予する制度が利用できる仕組みです。
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