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増える相次相続控除の適用件数 令和4年に1万2千件超え、金額は443億円

2024.11.11

相次相続控除の適用件数が増加しています。

相次相続控除とは、たとえば父と母が10年以内に亡くなり、2回相続税が課税されている場合に、最初の相続税額を基に計算される金額を控除できる制度です。

具体的には、①今回亡くなった被相続人の相続人である人で、②今回の相続の開始前10年以内に開始した相続により今回亡くなった被相続人が財産を取得しており、③今回の相続の開始前10年以内に開始した相続により取得した財産について、今回亡くなった被相続人に対し相続税が課税されている場合に適用ができます。

ただし相次相続控除の適用対象者は相続人限定なので、相続放棄した人や相続権を失った人は、適用できません。

相次相続控除の金額は、次の算式で求めます。代入すべき値の概要は以下のとおりです。
相次相続控除額=A×C/(B-A)×D/C×(10-E)/10
A=今回亡くなった被相続人が前回の相続で課税された相続税額
B=今回の被相続人が前の相続で取得した純資産価額
C=今回の相続等によって財産を取得したすべての人の純資産価額の合計額
D=今回のその相続人の純資産価額
E=前の相続から今回の相続までの期間(1年未満は切捨て)
※上記の「純資産価額」=取得財産の価額+相続時精算課税の適用を受ける財産-債務および葬式費用の金額

国税庁の統計によると、次のとおり相次相続控除の適用者が増加しています。

申告状況 課税状況
相続人数 金額(百万円) 相続人数 金額(百万円)
平成27年 9,101 35,560 7,808 23,661
平成28年 9,765 33,430 8,346 26,024
平成29年 10,570 35,857 8,881 25,484
平成30年 11,092 41,281 9,082 30,047
令和1年 10,990 47,761 8,906 33,801
令和2年 12,099 43,027 9,959 30,037
令和3年 13,234 52,902 10,692 33,871
令和4年  15,605 63,453 12,792 44,360

申告状況と課税状況の差は適用が否認されたケースとも考えられます。
これにともない、不服を国税不服審判所に申し立てるケースも出てきました。
たとえば、父の死亡で開始した相続時に母が配偶者の税額軽減を受けて子とともに当初一次相続税申告をしており、母の死亡で開始した相続時に子がいったん二次相続税申告したあと、相次相続控除額を増加させるため、当初の一次相続申告について亡き母の配偶者税額軽減の適用をやめるべく修正申告し、二次相続申告につき相次相続控除額が増えたとして更正の請求をした事案がそれです(国税不服審判所裁決令和 6年5月29日)。
しかし審判所は、一次相続の当初申告につき所轄税務署が事実上修正しなかったことから、二次相続の申告につき減額更正を認めませんでした。

このほかにも相次相続控除を巡る事案もあるようで(令和6年6月10日)、今後申告する相続人の増加に伴い、相続人が不服を申し立てるケースが増えることが予想されます。

[ 遠藤 純一 ]

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