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不動産管理会社が集金代行した賃料 相続税の課税財産になるのを見落とした事例

2024.08.26

手広く賃貸不動産を稼働させている資産家の多くは、不動産管理会社との間で、家賃の集金代行・滞納処理などを行ってもらう業務委託契約をしているのではないでしょうか?こうしたケースで、ちょっとした行き違いからか、相続税の申告漏れが発生することもあるようです。

具体的には、資産家の相続が開始した月の家賃として管理会社がすでに集金していた家賃等について、相続開始後に相続人が管理会社から受け取っていたため、管理会社の集金家賃を相続財産と認識しなかったというもの。
この後、税務署から相続財産の申告漏れを指摘されたことから、相続人は国税不服審判所(以下、審判所という。)に判断を仰ぐことにした事例です(令和6年4月8日)。

裁決書によると、多数の賃貸不動産を保有する資産家に相続が開始したのは平成29年5月。管理会社は同月分の家賃を集金していました。
ただ、送金期日は相続開始後になっていました。この中には滞納家賃の立て替え分も含まれていたといいます。

相続人は相続があった月の家賃を管理会社から受け取り、自身の不動産所得として所得税申告する一方、翌年に資産家の相続に係る相続税において、相続月の家賃分を相続財産に含めず期限内申告をしていました。

ところが、税務署は相続開始時点で、被相続人である資産家と業務委託契約を締結していた管理会社が集金代行で集めた平成29年5月分の賃料が「預け金」状態となっており、その金額約880万円が相続税の課税価格に算入されていないと指摘、相続税の増額更正をしてきたことから、争いとなったものです。
審判所は、次の事実関係を指摘しました。

1、被相続人が所有等していた不動産に係る賃貸借契約により、各賃借人が支払うべきであった平成29年5月分の賃料等については、相続開始日において、いずれも支払期日が到来していたこと。

2、遺産分割協議書等により、被相続人が所有等していた不動産に係る全ての賃貸借契約に基づく債権債務は、当該各不動産を相続した者がそれぞれ承継する旨定められたこと。

これを受けて審判所は、次のように相続税の課税財産になると認定しています。
①賃料等のうち、相続開始日において管理会社が各賃借人から集金済みであったものについては、被相続人が管理会社に対し、集金済みの金額につき預け金に係る債権を有していたと認められること。

②賃料等のうち、相続開始日において管理会社が賃借人からの集金ができておらず、賃借人が滞納していたものについては、同社が相続開始日後に被相続人に対して立て替え、送金することとなっていたものの、相続開始日においては、被相続人が当該滞納をした賃借人に対し、賃料債権を有していたと認められること。

審判所は最終的に「賃料等の金額から手数料等を控除した金員の金額約880万円は、相続税の課税価格に算入すべき」と判断、税務署の更正処分・過少申告加算税の賦課決定処分を支持しています。

[ 遠藤 純一 ]

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