遺産を継がず、死後離縁しても不動産の名義人だったため固定資産税が課税された事例
養子縁組していた当事者の一方が亡くなった後でも、養子縁組の解消ができます(民法792条)。これを死後離縁といいます。
死後離縁は、その前に開始した相続には影響を与えないとされていますが、遺産である家屋を継がなかったのに、名義が残っていたため固定資産税を課税されていた人が、課税されるのはおかしいとして、行政不服審査法上の審査請求をして争った事例が最近、明らかにされました(いなべ市裁決令和6年7月1日・答申日令和6年6月18日)。
裁決書等によると、事実関係は次のとおりです。
Aさんは、Bさんと養子縁組し、その子であるC子さんと結婚しました。その3年後、Bさんが亡くなり、相続が開始しました。法定相続人はAさんとC子さんの2人でしたが、2年ほど遺産分割で話し合いが行われ、結局平成22年にAさんは「相続分のないことの証明書」(特別受益証明書)に署名し、Bさんの遺産を継がないことになりました。
それから約8年後の令和元年、AさんはC子さんと離婚しました。そして令和4年になってからAさんは亡Bさんと死後離縁しました。
固定資産税の課税庁は、令和5年分の固定資産税の納税通知書をAさんとC子さんに送ったところ、Aさんは納付をせず、平成23年以降の固定資産税の賦課は違法だと考えて、賦課の取消しを求めて審査請求に及んだものです。
審査庁であるいなべ市は、賦課が違法かどうかについて次の理由を挙げて、平成23年度以降の固定資産税の賦課処分に重大かつ明白な違法性があったとは認められないと判断しています。
①家屋補充課税台帳に所有者として登録されていたのは、Bであり、B名義の令和5年度固定資産税の納税義務は、相続人であるC子及びAにある。
②Aは令和4年2月21日に亡Bと離縁しているが、死後離縁に当たるため相続人の立場を失うものではない。
③Aは亡Bの遺産を何も取得していないから、平成23年度以降の固定資産税の賦課処分は違法なものと主張するが、A及びC子は家屋補充課税台帳の所有者名義の変更手続をおこなわず、処分庁が上記特別受益証明書の存在を知ったのはAからの審査請求書を受け付けた令和5年9月1日である。
また、Aが法律に基づいた相続放棄の手続を行った事実を認めるに足りる証拠は無く、法定相続人であることに変わりない。
また審理庁であるいなべ市は、Aさんが「平成29年度から令和4年度までの固定資産税について(中略)納付をしている。この際に、自分にも納税義務があることを理解した上で、自分の意思で納付を行っている。これは納税義務の承認行為でもある」と指摘。平成23年度以降の固定資産税の賦課処分に違法性はないと判断しています。
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