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固定資産税の住宅用地特例の適用除外めぐり注目裁決 空家法に基づく勧告の適否自体が問われる

2024.06.10

空家等対策の推進に関する特別措置法(以下、空家法という。)に基づき、住宅家屋が特定空家等に該当するとして市町村から「勧告」を受けた場合、固定資産税・都市計画税(以下、固定資産税等という。)の税額が大幅にアップします。
「勧告」の対象となった住宅家屋の建つ宅地は、固定資産税等の「住宅用地の課税標準の特例」の適用を除外されるからです(地方税法349条の3の2、702条の3)。
特定空家等とは、「建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地」のうち、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態等に陥っているものを指します。
国土交通省によると、令和5年3月31日現在で、平成27年度から令和4年度までの8年間に、市区町村により特定空家等として勧告がなされたのは、累計3,078件に上ります。
要するに固定資産税の「住宅用地の課税標準の特例」の適用除外は、危険な放置空家の増加に歯止めをかける政策の一環として施行された税制上の措置ですが、この措置をめぐり、納税者が市を相手に審査請求に及んだ事例が最近、明らかになりました(京都市裁決令和6年3月26日)。

裁決書によると、京都の住宅地に建つ空家の家屋が特定空家等に該当するとして、令和4年に京都市から「勧告」を受け、令和5年1月1日の賦課期日において「勧告」が撤回されていないとして、土地家屋の所有者である納税者が、固定資産税等の住宅用地の特例の適用除外の処分を受けたケースです。
納税者は、建築士に現地を確認してもらったところ、問題の家屋は危険物ではないと反論しました。

そこで審査請求の審理庁(京都市)では、①問題の家屋について、改正前の空家法や京都市の特定空家等に係る判定基準に基づき、特定空家等と認定したことは妥当だったか、②「勧告」までの手続きは適法だったかを検討しました。

その結果、①について次のとおり判断しています。
ア、京都市の特定空家等に係る判定基準は、空家法第14条第14項に基づき国土交通大臣が定める指針の内容を踏まえて作成されたものであり、空家法の趣旨に照らしても一般的合理性が認められる。
イ、同基準では、「概ね10分の1以上の範囲にわたって屋根ふき材が脱落し、剥離し又はずれている」場合などは、「管理不全状態」に該当する。
ウ、勧告書の別紙掲載の写真を見ると、問題の家屋の屋根は、「屋根ふき材」である瓦が少なくとも「10分の1以上の範囲にわたって(中略)ずれている」ことが認められる。
エ、納税者は漆喰材で補修していることをもって、屋根の補強を行い、相応の対処をした旨を主張しているが、これらの行為は、瓦のずれを固定するため、いわば応急処置的にずれた状態のまま漆喰材で補強しているものに過ぎない。
オ、特定空家等の状態が改善されたとはいえず、「特定空家等」(空家法第2条第2項)に該当すると認定したことに誤りは認められない。

次に②については「勧告の前段で、勧告における指摘事項について必要な措置を講じるよう指導しており、また、勧告に当たっては相当の猶予期限を付けて、所有者である審査請求人に通知しているなど、勧告の手続に問題があるとは見受けられない」としています。

こうしたことを受けて審理庁(京都市)は、「京都市長は令和4年3月16日付けで本件勧告を行っており、令和5年度の賦課期日(令和5年1月1日)においても、勧告が撤回された事実は確認できない」として、宅地に対する固定資産税等の住宅用地の課税標準の特例の適用除外の処分を行ったことに違法・不当な点は何ら認められないと判断しています。

行政不服審査法に基づき、固定資産税等の課税をめぐる審査請求で、空家法の勧告の適否にまで踏み込んだ判断がなされた裁決は、公表されたものではこれが初めてと見られます。

[ 遠藤 純一 ]

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