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区分所有建物の一部取壊し、跡地に別棟新築 建替え認めず、固定資産税は大幅増

2024.02.26

Aさんは、連棟式とみられる区分所有の建物とその敷地約130平米を所有していました。しかし、古くなったので区分所有を解消、区分所有だった建物一部を残す一方、残り一部を年末に取り壊し、その跡地約75平米に別棟の住宅に建替えようと考えました。
実際Aさんは、計画通りに年明けに新築住宅が建てることができました。

ところが、東京都は住宅が1月1日時点で工事中で未完成だったため、75平米の敷地部分は住宅用地と認められないとして、固定資産税・都市計画税(以下、固定資産税等という。)の負担増をAさんに通知しトラブルになりました(東京都裁決令和5年12月11日)。

Aさんは東京都の負担増の通知に不服だったので、東京都に行政不服審査法に基づく審査請求をしました。
問題になったのは、固定資産税等の「住宅用地の課税標準の特例」の適用が認められる「建替特例」が適用されるかどうかという点です。

住宅用地の課税標準の特例(地方税法349条の3の2、702条の3、以下、住宅居用地特例という)とは、原則として1月1日において住宅の敷地になっている宅地が対象。たとえば固定資産税の場合200平米までの住宅用地(小規模住宅用地)については、評価額を6分の1(都市計画税は3分の1)にして課税標準とするものです。これが適用されないと、税額は大幅に高くなる仕組みです。

しかし1月1日時点で住宅家屋が建替中である場合には、原則として住宅用地特例の適用はありません。そこで登場するのが建替特例です。

この建替特例とは、1月1日時点で更地であった場合でも、一定の建替えの要件を充たす場合には、引き続き住宅用地特例を適用しようというものです(地方税法の施行に関する取扱いについて(市町村税関係)(平成22年4月1日、市町村税関係、以下、取扱い通知という)。

その主な要件とは次のとおりです(建替え中の土地に係る固定資産税及び都市計画税の課税について(平成6年2月22日付自治固第17号))。

  1. 当該土地が、当該年度の前年度に係る賦課期日において住宅用地であったこと。
  2. 当該土地において、住宅の建設が当該年度に係る賦課期日において着手されており、当該住宅が当該年度の翌年度に係る賦課期日までに完成するものであること。
  3. 住宅の建替えが、建替え前の敷地と同一の敷地において行われるものであること。
  4. 当該年度の前年度に係る賦課期日における当該土地の所有者と、当該年度に係る賦課期日における当該土地の所有者が、原則として同一であること。

逆に、これらの要件を満たさない場合には、建替えであっても土地は住宅用地と認定されません。Aさんの審査請求を受けた審理した東京都行政不服審査会は、次のように認定しました。

(1)Aさんは、自身が所有する土地上の旧家屋の一部を取り壊してできた跡地に本新家屋を建設したことが認められる。
(2)一部取壊し後の旧家屋と跡地上の新家屋とは別個の家屋であるから、建替特例通達にいう「既存の住宅( 中略) に替えて住宅を新築している土地」には該当しない。

結局、Aさんは、住宅家屋を新築した跡地について住宅用地特例の適用を受けることができませんでした。

[ 遠藤 純一 ]

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