Topics
TACTトピックス

親が買った中古住宅に子供家族を住まわせて 不動産取得税トラブルになった事例

2024.02.13

不動産を多くお持ちの資産家なら、お荷物不動産を処分しながら、手にした現金を利用価値のある不動産に変えて節税を図ることはよく行われます。

たとえば、相続税の合法的な節税ができる小規模宅地等の特例を適用する相続人、候補地は既に決まっている場合。
それ以外の相続人へ将来の相続で現金・預金を渡すよりも不動産を選択することも考えるでしょう。

これはその相続人の意向が重視されますが、現金・預金よりも不動産の方が相続税の財産評価の上では有利だということも判断材料になるからです。子供の多い相続人が、広い住まいを望んでいるケースでは、住宅を買って貸し与えることも選択肢の一つになるでしょう。

ただしこの場合、注意が必要なのが不動産取得税です。広い中古の戸建て住宅を買って子供家族に住まわせたケースで、トラブルになった事例がありました(東京都裁決、令和5年10月18日)。

不動産取得税には、住宅用家屋を取得した場合、家屋の固定資産税評価額から最大1,200万円控除できる特例と、その敷地について所定の減額が認められる特例があります(地方税法73条の14、同73条の24)。
このうち中古住宅の家屋でこの特例が適用できる場合には、中古住宅が建築された当時の控除額が取得時の家屋の固定資産税評価額から控除されることになります。

ただし適用があるのは、取得する住宅が耐震基準適合既存住宅で、取得した個人が自己の居住の用に供する場合です。上記トラブルは、資産家個人が買った住宅に、自分自身が住まなかったことが課税当局から問題視されたのです。Aさんは特例が適用されないことに不服で審査請求しました。

裁決書によると、資産家Aさんは令和2年に中古住宅・敷地を取得していました。またAさんが中古住宅を取得してから令和4年2月までの時点で、中古住宅の所在がAさんの住民票上の住所と一致したことはなく、Aさんの聴取からも、そこにはAさんの子が居住し、公共料金の契約者になっておりAさんは1、2か月に1度、1週間程度中古住宅に泊まっていたにすぎなかったということです。さらに、Aさんからは「自己の居住の用に供する」に係る事実を確認できる客観的資料が提示されたとの事実も確認できなかったとしています。

審理をした東京都行政不服審査会は、上記事実から「自己の居住の用に供する」に当たるとは認定できないと結論、結局Aさんは軽減されない不動産取得税50万円余りを負担することになったものです。

ちなみに東京都の取扱いでは、取得した中古住宅家屋が「自己の居住の用に供するもの」に該当するかどうかは以下のアからウまでの要件を全て充足しているかどうかにより判定するものとされています。

ア 住宅を取得した目的が本人が自己の居住の用に供するものであること。
イ 住宅に、本人が現実に居住したもの。
ウ 住宅を取得後、本人が居住を開始するまでの間、個別の事情に照らし本人と同居することが通常であると認められる者(同居者)以外の者による使用がないこと。

また上記の判定にあたり、本人及び同居者の日常生活の状況、当該住宅の構造及び設備の状況その他の事情を総合的に勘案して行うものであるが、具体的な認定にあたり、以下の留意点をそれぞれ挙げています。

(1)アの要件の認定にあたっては、当該住宅を取得後1年以内に本人が現実に居住を開始した場合には、当該要件を充足するものと認定して差し支えないとし、当該住宅を取得後本人が現実に居住を開始するまでの期間が1年を超えている場合には、居住までの期間を要した事情がリフォーム、子の入園や入学、転勤等客観的な事情であるかどうかを勘案したうえで、実態に即して
認定する。

(2)イの要件の判定にあたっては、住民票の住所が取得した住宅の住所地となっている場合には、原則として当該要件を充足するものと認定する。

[ 遠藤 純一 ]

当サイトに掲載の文章等の無断転載を禁じます。
全ての著作権は税理士法人タクトコンサルティングに帰属します。
無断使用、無断転載が発覚した場合は法的措置をとらせていただきます。