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居住用で買った中古SOHO仕様マンション 不動産取得税は1200万円控除適用認められず

2023.09.11

SOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)とは仕事場と住まいを兼用する仕事・生活のし方や、その使用方法に適合する建物のことで、テレワークに向くことから注目されています。
実際、そのような仕様のマンションを存在しますが、税金面では注意が必要なようです。

というのも、全部住宅にするつもりで中古のSOHOマンションを買った人が、不動産取得税の住宅の特例を受けられず、高い税金を払わされた事例があるからです(東京都 令和5年2月7日裁決)。

裁決書によると、納税者Aさんは令和元年に中古のSOHO仕様のマンションを購入しました。
具体的には次のような家屋でした。

1、契約に伴う重要事項説明書に家屋の用途制限として「SOHO専用」と記載。
2、現況床面積は 75.5平米。
3、家屋の図面には、「ビジネスルーム」とされる居室①や「プライベートルーム」とされる居室②が記載。居室①については、床面積が「約 16.4畳」(= 26.56平米)とされ、キッチンには「上下可動扉」があり、また、居室②には「ウォークインクローゼット」があった。
4、この不動産に係る登記の全部事項証明書には、建物の種類として「事務所・居宅」と記載。

Aさんはこのマンションを取得後、不動産取得税の課税庁に対し、「自身の居住用としてのみ使用しており、事務所やビジネス目的での使用は一切ございません」と書き添えて、不動産取得税調査申請書と添付資料(不動産売買契約書等)、販売チラシ・マンション管理組合からの取得物件がすべて住宅として使用可能である旨の証明書の写しなどを提出していました。

ところが課税庁は、居室①部分を非住宅と認定、その他の住宅部分(75.5平米-25.56平米=48.94平米)が50平米未満となったため、不動産取得税の中古住宅に係る特例である1200万円控除の適用を認めず、課税したことからAさんが行政不服審査の審査請求に及んだものです。

不動産取得税の1200万円控除とは、取得する家屋が中古住宅の場合、
(1)自己が使用すること
(2)耐震基準適合既存住宅であること
(3)床面積が50平米以上240平米以下であること
その他の要件を満たす場合、家屋の課税標準(固定資産税評価額)から最高1200万円を控除する特例です(地方税法73条の14)。

東京都の審査会は、重要事項説明書の「SOHO専用」との記載があることを重視、Aさんがこの家屋をSOHO専用であることに合意していると指摘し、Aさんが「専ら居住利用の目的で本件不動産を取得したとまでは判断できない」としました。

さらに審査会は「SOHO として利用する場合、居室①を執務スペース、居室②を寝室等の居住スペースと判断するのが合理的」としたうえ、Aさんから、これを覆すに足る証拠の提出はないとして、家屋の課税標準から1200万円控除することなく、居室①の床面積で按分した課税標準額に税率4%を、その他に特例税率3%を適用した課税庁の税額計算に間違いはなかったと判断しています

[ 遠藤 純一 ]

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