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財産評価基本通達6項の適用動向 令和5年1月から6月は全国で4件

2023.08.28

相続した株式や不動産の評価額が財産評価基本通達通りに評価されていても著しく不適切だとして、税務当局から再評価されたケースが今年1月から6月までに、4件あったことがわかりました。
これは国税庁の保有する4件の文書「財産評価基本通達6項に基づく指示について(上申)」の情報公開で明らかになったものです。

相続税を計算する場合には、相続財産が金銭価値でいくらになるかを評価する必要があります。国税庁では、評価において公平性を担保し、納税者の負担を軽くするため評価方法を画一的に定めた「財産評価基本通達」を公表するとともに、実務で利用しています。

ところがこの通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる場合も、出てこないわけではありません。そこでこうした場合に備えて通達の中に、例外的に、国税庁長官の指示を受けてこの通達の評価方法と異なる評価方法で相続財産を評価する仕組みを置いています。これが「財産評価基本通達6項」です。

これを適用する場合には、国税局長が国税庁長官に対し、「財産評価基本通達6項」を適用して、財産評価基本通達とは別の評価方法によることの指示を仰ぎ、国税庁長官の指示を受ける流れになっています。

今年1月~6月に上申・指示があったのは、次の表とおりです。このうち、当初の相続税申告で納税者の一部が相続税0円としていました。

時期国税局対象財産
3月29日 関東信越国税局 複数の不動産
4月17日 金沢国税局 取引相場のない株式
6月19日 東京国税局 複数の不動産
6月19日 東京国税局 2棟・3室の各不動産

この通達6項をめぐっては、昨年4月、最高裁が、相続税を0円と当初申告していた事例について先例となる判決を下し話題となりました。最高裁判決以降、国税局では、次のように段階を踏んで総則6項の適用するかどうかの判断をしています(上申書「評価通達6項の適用に係る判断枠組み」より抜粋)。

「評価通達6項の「評価通達の定めによって評価することが著しく不適当」であるかどうかは、次のイないしハを総合的に勘案して判断することが妥当と考えられる。
イ評価通達の定める評価方法以外に、他の合理的な評価方法が存在するか
ロ評価通達の定める評価方法による評価額と他の合理的な評価方法による評価額との間に著しい乖離が存在するか
ハ課税価格に算入される財産の価額が、客観的交換価値としての時価を上回らないとしても、評価通達の定めによって評価した価額と異なる価額とするととについて合理的な理由があるか(この場合において、評価通達の定めによって画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情があるときには、当該合理的な理由があると認められる。)」

[ 遠藤 純一 ]

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