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不動産の遺贈・不動産取得税がかかる場合、かからない場合

2023.07.24

不動産取得税には、「所有権の形式的移転による不動産の取得」に対して非課税とする規定があります。そして、そこには、不動産を相続した場合が規定されています。つまり相続で不動産を取得した場合には不動産取得税はかからないということです。

地方税法第73条の7 (形式的な所有権の移転等に対する不動産取得税の非課税)
第1項 道府県は、次に掲げる不動産の取得に対しては、不動産取得税を課することができない。
1号 相続(包括遺贈及び被相続人から相続人に対してなされた遺贈を含む。)による不動産の取得

ただし、注意したいのが、1号のカッコ書き(包括遺贈及び被相続人から相続人に対してなされた遺贈を含む。)です。民法では、遺言者は包括遺贈や特定遺贈でその財産の全部又は一部をあげることができると規定されて
います(民法964条)。

包括遺贈とは遺言で全部、又はその何分の1などという割合で遺産をあげることです。包括遺贈で不動産をもらった場合には、不動産取得税はかからないということになります。もっとも、この場合のもらった人は上記の条文では相続人に限っていません。そうすると、相続人でも、相続人以外の人でも包括遺贈で不動産をもらった場合には不動産取得税はかからないということになります。

一方、相続人に対する遺贈には、包括遺贈のほか、特定遺贈も含まれます。包括遺贈なら、上記のとおり、非課税になります。
問題になるのが、特定遺贈です。特定遺贈とは、遺産のうちどの財産か、そのどれくらいかを決めて、それをあげるケースです。上記の地方税法の条文を見ると、特定遺贈で不動産をもらった場合に非課税になるのは、相続人だけとなっています。

実は、遺贈による不動産の取得が非課税になるかどうかで、争いになることがあります。最近では、祖母が孫に対して、財産のほとんどを遺贈したケースで、不動産取得税が非課税となるかどうかで争いとなったケースがあります(東京都裁決令和4年7月21日)。

孫は課税庁に、不動産取得税の非課税申告書と遺言の公正証書を提出しましたが、課税庁は非課税に該当しないとしたため、争いになったものです。孫は、財産のほとんどをもらっているため、実質的に包括遺贈だと主張しました。しかし、審査会は、次の3点を指摘して、問題の遺贈が「被相続人から相続人以外の者に対してなされた特定遺贈であるとした処分庁の判断は不合理なものとはいえない」と判断しています。

  1. 遺言公正証書の記載が、遺言者である亡祖母から請求人(孫)に対して特定の財産(宅地約165㎡、建物約50㎡)を指定して遺贈する形式となっていることが認められること。
  2. 請求人は、被相続人には請求人に対する本件遺贈が包括遺贈であるという意思があった旨主張するが、その主張を裏付ける証拠は提出されていないこと。
  3. 請求人が亡祖母の財産のほとんどを取得した事実のみをもって包括遺贈と認めることはできないこと。

[ 遠藤 純一 ]

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