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中古住宅転売で消費税トラブル 土地・建物価額操作での節税はNG

2023.07.10

土地と建物を一括して売買する場合、総額の売買金額を契約書に記載していても、土地と建物の価額について特に取り決めがない場合には、取引の総額を合理的に按分する必要があります。消費税を納める売主側では、建物の価額を合理的に按分することが求められます。土地は消費税が非課税なのに、建物は消費税が課税されるからです。

このような「課税資産の譲渡の対価の額と非課税資産の譲渡の対価の額とに合理的に区分されていないとき」の区分方法として「当該課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は、これらの資産の譲渡の対価の額に、これらの資産の譲渡の時における当該課税資産の価額と当該非課税資産の価額との合計額のうちに当該課税資産の価額の占める割合を乗じて計算した金額とする」と規定しています(消費税法施行令45条3項)。

では、契約上、土地と建物それぞれの金額を売主と買主で合意し、契約書に記載があれば、常に建物の対価と土地の対価が合理的に区分されているといえるのか、というと、そうでもないようです。

というのも、ある住宅の買取転売業者が、買取時にくらべ、転売時の土地の価額を膨らませ節税をしていたケースで、契約上、土地建物価額が明確だったのに税務署から「課税資産の譲渡の対価の額と非課税資産の譲渡の対価の額とに合理的に区分されていないとき」に当たるとして、土地建物価額の再計算が行われ、追徴されたケースがあるからです。

この事件について東京地裁は、税務署の土地建物価額の再計算による更正処分を支持する判決を下しています(令和5年5月25日、控訴)。

この買取転売業者が行っていたのは、単純化すると次のようなものでした(仮に消費税10%とする)。

  1. 建築後30年の住宅の土地建物を一括で620万円で仕入れる。
  2. その際の土地建物の価額を土地400万円・建物200万円にする(消費 税20万円)。
  3. リフォームに約300万円かけて代金総額約1,200万円+消費税でユーザー個人に転売。
  4. この際の土地建物価額は土地800万円・建物400万円とする。
  5. 建物は仕入れ200万円とリフォーム費300万円で合計500万円なのに、転売時は建物は原価割れ。

消費税は、仕入れにかかる消費税から売上にかかる消費税を控除して、消費税の納税額または還付額を計算することになっていますが、上記のケースでは1から4の操作により消費税の還付が発生していました(買主から受取る建物の消費税は40万円だが、仕入れにかかった消費税は上記の20万円とリフォーム費の30万円で、10万円のマイナスになる)。

東京地裁は、買主が課税事業者なら、建物価額については市場原理が働くが、買主が個人のユーザーなら、建物に係る消費税負担は売主買主双方で小さい方がよいことになり、建物の「譲渡の対価の金額を恣意的に低く設定した上、これだけが当事者双方の合意した「対価の額」であるとしてその納税義務を免れようとする事態が起こり得る」と指摘。

このようなケースは、課税資産の譲渡の対価の額と非課税資産の譲渡の対価の額とに合理的に区分されていないとき」に当たると判断、東京地裁は税務署のリフォーム費用等を考慮した建物金額等の再計算を支持しています。

[ 遠藤 純一 ]

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