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共有土地を放置すると、税金で損することも

2023.04.10

共有の土地を放置したまま、時を経ると、相続などにより共有者の顔ぶれがガラッと変わってしまうことがよくあります。それだけならいいのですが、ここに固定資産税・都市計画税が絡むと厄介なことになってきます。

たとえば東京都23区の場合、都の課税部門が所有者につき調べるとき登記所からの登記済通知書によって通知される最初の人をもって、共有者のうちの筆頭者として固定資産税の土地課税台帳に記載することになっています。

このため、たまたま筆頭者にされてしまうと、実務上真っ先に、筆頭者に固定資産税等の賦課がなされる仕組みなのです。

しかも税法上、共有物に対する固定資産税等の税金は、納税者が連帯して納付する義務を負うことになっており(地方税法10条の2)、地方団体の徴収金の連帯納付義務等については、民法の規定(民法436条、437条及び441条から445条まで)を準用することとされています(同法10条)。

すなわち民法436 条では債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定により数人が連帯債務を負担するときは、債権者はその連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができるというのです。

相続人にしてみれば、共有者が代替わりして、たまたま相続で持ち分を取得しただけです。ところが上記のような事情で相続人は共有土地の筆頭者にされてしまいます。そんなことも知らない相続人のもとへ突然、固定資産税等の納税通知書が届けられると、びっくりすることになるのです。

都合の悪いことは重なるもので、こうした筆頭者はほとんどの場合、顔触れの代わった他の共有者を知りません。全員分の税額を立替えたとしても、後で立替分を回収できない事態に立ち至ることが多いのが実情です。

最近でも、昭和29年頃8人の共有だった20㎡弱の土地につき、平成31年までに少なくとも3人の相続が開始し、そのうち一人の相続人が土地課税台帳において筆頭者になっていたことから、突然、令和2年度の固定資産税の納
税通知書が届けられ、納税を余儀なくされる羽目になった事案があります。

この相続人は、不服があるとして審査請求しましたが、棄却されています(東京都裁決令和4年7月15日)。

裁決によると、この相続人は平成7年ごろ、他の共有者3人に共有持分の無償譲渡を決めていたといいます。しかし、何らかの事情で名義変更の登記はなされなかったといいます。このことが後になって仇となってしまったというわけです。

共有土地の処分や共有の解消は、できるだけ速やかに実行してトラブルの芽を摘んでおきたいものです。

[ 遠藤 純一 ]

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