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和解がアダで不動産取得税が課税に 遺留分減殺請求しない代わりに共有持分の取得で

2023.04.24

不動産の相続では不動産取得税は非課税です(地方税法73条の7)。ところが最近、遺言に書かれた遺産分割では遺留分を侵害しているケースで、遺留分減殺請求に係る和解がアダとなって不動産取得税が課税された事案が出てきました(東京都裁決令和4年12月22日)。

裁決書によると、Aさんの母の死亡に伴い開始した相続で、母が全財産を次女(Aさんの妹)に送る旨の遺言をしていたことが発端。Aさんは、母所有の本件士地に建設した共同住宅の一部に住んでいましたが、母死亡後、知ら
ない間にその土地と、Aさんの住まい部分を除く建物は、⑴平成29年6月に次女名義で登記されていたといいます。

そこでAさんは遺留分減殺請求書を次女に送り付けたが応答はなかったため、借地権確認訴訟を裁判所に起こしました。裁判では⑵相続した不動産の共有持分をもらう代わりに遺留分減殺請求をしないとの裁判上の和解が令和元年10月に成立し、同年11月、これに基づき和解を原因とした土地・建物の共有持分の所有権移転登記なされました。

この登記の通知を受けた課税庁が不動産取得税につき、「遺留分を取得したとは認められないため課税になる。非課税にならない」として納税通知書を送ったことから、Aさんは課税に不服があるとして審査請求に及んだものです。

審査の諮問を受けた東京都の行政不服審査会は、上記の事実関係に基づく「請求人は、令和元年10月に、和解により本件士地の持分を取得したものと認められ、このことが「不動産の取得」に当たる」として課税庁の処分を支持
しました。

また、Aさんが主張するように和解調書の成立が遺留分減殺請求を端緒としたものであったとしても、「請求人は和解により土地の持分を取得したものであって、遺留分減殺請求や遺産分割協議など相続の手続として取得したものでない以上、相続による不動産の取得に該当するということはできない」としています。
東京都は審査会の上記答申のとおり裁決しました。

なお、遺留分減殺請求権は、令和元年7月1日以後に開始する相続から遺留分侵害額請求権に改正され、相続財産の現物ではなく、お金で解決するシステムになっています。

このため遺留分侵害額請求をした人が、金銭債権を取得しますが、その代物弁済として相続不動産の一部を取得する事態となった場合には、やはり不動産取得税は「相続による取得」とはならず、課税されるものと思われます。

[ 遠藤 純一 ]

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