財産債務調書の加算税軽減・加重制度 最近の運用動向
財産債務調書制度では、同調書を提出する義務のある人が調書を出さなかったり、記載漏れがあった財産・債務に起因する所得税や相続税の修正申告等をした場合には、それに基づく本税額の5%の加算税の加重を行うとこになっています。
反対に同調書を提出期限までに出していたケースで、記載された財産・債務に起因する所得税や相続税の修正申告等をした場合には5%の軽減がなされる仕組みです。
では、実際にどのように運用されているか画が気になるところです。国税庁への情報公開で判明した資料によると平成30事務年度(平成30年7月1日から翌年6月30日まで)以後4事務年度の所得税の実績は次のとおりです。
1.所得税の軽減の場合
年度 | 件数 | 増差本税額 | 軽減加算税額 |
---|---|---|---|
平成30年事務年度 | 636 | 211,308万円 | 11,315万円 |
令和1年事務年度 | 555 | 163,003万円 | 8,861万円 |
令和2年事務年度 | 315 | 193,037万円 | 9,608万円 |
令和3年事務年度 | 355 | 283,328万円 | 16,028万円 |
2.所得税の加重の場合
年度 | 件数 | 増差本税額 | 軽減加算税額 |
---|---|---|---|
平成30年事務年度 | 564 | 251,315万円 | 28,471万円 |
令和1年事務年度 | 571 | 384,921万円 | 35,277万円 |
令和2年事務年度 | 440 | 239,717万円 | 24,370万円 |
令和3年事務年度 | 479 | 411,150万円 | 42,029 万円 |
現在、各地の国税局では、財産債務調書の加算税の軽減・加重制度の運用にあたり、税務調査の案件に関する財産債務調書が提出されているか、財産・債務の記載漏れはないかの確認の徹底を図っています。
来年の提出分(令和5年分)からは制度が改正されます。主な改正は、財産債務調書の提出義務者に、その年の12月31日で合計10億円以上(以下、10億円以上基準)という)の財産を保有する人が対象となりました。
これに伴い、「10億円以上」基準で期限内に提出された財産債務調書に記載された財産債務に関し、所得税や相続税で修正申告した場合には過少申告加算税を軽減し、財産債務調書の提出がないなどの場合で、所得税や相続税で修正申告した場合には過少申告加算税等を加重することになっています。提出義務があると見込まれる場合には、このあたりのことも注意しておきたいものです。
なお、提出期限はその年の翌年の 6月30日までとされ、提出期限が従来の3月15日よりも延長されました。
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