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相続税の財産評価の例外規定6項が発動 昨年の最高裁判決以後で初

2023.02.27

昨年4月19日の相続税の節税をめぐる最高裁判決で話題となった財産評価のモノサシで、国税庁の定めた財産評価基本通達以外の評価方法を認める同通達6項が、その判決以後初めて、関東信越国税局管内で発動されていたことがわかりました。

発動されたのは、昨年12月に関東信越国税局が上申し、同月内に国税庁が指示書を出した2件の事案に対してでした。
これは国税庁への情報公開で分かったものです。

国税庁の「財産評価基本通達」は、相続税の課税対象となる財産の金銭価値を見積もるモノサシとなっているものです。というのも、相続税を計算する場合には、相続財産が金銭価値でいくらになるかを評価する必要があ
るからです。
この通達は国税庁が評価において公平性を担保し、納税者の負担を軽くするため評価方法を画一的に定めたもので、実務で利用されています。

しかし、この通達に基づいた財産評価では著しく不適当と認められる場合も、出てこないわけではありません。そこで、こうした場合に備えて財産評価基本通達の中に、例外的に、国税庁長官の指示を受けてこの通達の評価方法と異なる評価方法で相続財産を評価する仕組みを置いています。これが「財産評価基本通達6項」です。

この通達6項をめぐっては、昨年4月、最高裁が先例となる判決を下し話題となりました。判決が下された事案は、納税者が借入金で賃貸不動産を買って相続税負担を0にしたことで、路線価評価を定めた財産評価基本通達の例外規定である通達6項により、財産評価基本通達に基づく相続税評価額ではなく、それ以外の適正な評価方法の一つ、鑑定評価額で税務署から相続税の増額更正処分がなされたケースです。最高裁は、税務署の鑑定評価額による追徴を支持し、納税者の上告を棄却していました。

現在、財産評価基本通達6項の適用を受けた相続税の事案で、株式の評価をめぐる事案3件が、税務訴訟となって裁判所で係属しています。

一方、令和5年度の与党税制改正大綱では、マンションの相続税評価に関し、通達6項の適用を背景とした財産の個別評価の問題点を指摘し、マンション評価の「適正化の検討」が取り上げられました。国税庁では「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議」を立ち上げて、マンションの評価を決めている財産評価基本通達の改正等の検討を開始しています。

今後もさらに、財産評価基本通達6項の存在感が高まりそうです。

[ 遠藤 純一 ]

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