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事業税 10棟10室基準を満たさない場合の不動産貸付業基準にご用心床面積 600㎡以上は課税床面積で計算

2022.10.25

不動産の貸付を行っている場合に、注意したいのが個人事業税です。
個人事業税は都道府県税が課税する地方税。個人の行なう第一種事業、第二種事業及び第三種事業に対し、所得を課税標準として事務所又は事業所所在地において、その事業を営む個人に課税する仕組みです。

このうち不動産貸付業は、第一種事業に含まれます。不動産貸付業であれば、前年の所得税の不動産所得に、事業税にはない控除である所得税と青色申告特別控除を加算、事業税の繰越控除と事業主控除(最高290万円)を差し引いた金額が課税標準となり、5%の税率が適用されます。

問題は、貸付の規模や収入が都道府県所定の基準を満たす場合に、「不動産貸付業」と認定され課税されるという点です。中心的な基準は不動産の貸付規模の基準で、建物の貸付では、多くの場合、次のようになっています(不動産貸付業の認定基準ついては異なることもあるので、事務所または営業所所在地の道府県にご確認ください)。

住宅の建物.........10棟10室以上
住宅以外の建物...5棟10室以上

この基準を満たさない場合でも、課税が不公平にならないように、上記の基準を補完する基準が設けられている場合もあります。たとえば東京都の場合、貸付用建物の床面積が600平方メートル以上で、かつ収入金額が年間1,000万円以上である場合も不動産貸付業と認定されます(不動産貸付業の認定基準を補完する床面積基準や収入金額基準ついては、都道府県で異なることが多いため、事務所または営業所所在地の道府県にご確認ください)。

ただ、この補完基準に当てはまるかどうか微妙なケースで、納税者と課税当局との間でトラブルも出ています。東京都の事例(令和4年2月2日裁決)を見てみましょう。

裁決書によると、争いとなったのは、収入基準を満たし、住宅用の賃貸マンションが7戸だったケース。納税者は、床面積について専有面積で合計しても457.83平方メートルしかなかったのに、不動産貸付業と認定したのはおかしいとして行政不服審査法に基づき、審査請求したものです。

審査した東京都は、地方税法に定める不動産貸付業の認定に関し、次のことを確認。

1東京都の事務提要で「不動産貸付業に該当するかどうかの認定は、所得税の取扱いを参考とするが、社会通念上事業と称するに至る規模、賃貸料収入の状況、貸付不動産の管理の状況等を総合勘案して判定する」ことを前提に、上記の床面積基準600平方メートル以上、収入金額基準1,000万円以上が決められていること。2床面積の認定に当たっては、事務提要で「各部屋ごとに貸し付けている場合は当該貸付部分に廊下、階段等の共有部分を含めて計算する。」とされていること。

こうしたことから、東京都は、共用部分を含めた床面積が655.86平方メートルになるとして、基準を満たすと判断し、課税を認める裁決を下しています。

貸付マンションの床面積は、共用部分を含める点、見落とされることがあるかもしれません。東京都によると、この床面積はマンションの固定資産税の課税明細書に記載の課税床面積と原則として同じですから、投資家は、これでチェックするとよいでしょう(この取扱いについても、事務所または営業所所在地の道府県にご確認ください)。

[ 遠藤 純一 ]

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