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円安で、外国不動産の売却にご用心  外貨建取引なら、円換算で譲渡益計算

2022.07.11

外国為替相場で歴史的な円安が話題になっています。米ドルなら現在1ドル=136円前後の水準で、ほんの10年ほど前は1ドル=100円を下回る相場でした。

そこで、円高時に買っていた外国不動産の現金化を検討する人もいるでしょう。その場合に注意が必要なのが、外貨建取引での譲渡所得の計算です。この場合は、取引時点での為替相場で円換算した金額で総収入金額、取得費、譲渡費用を計算すること、つまり為替差損益を含めて譲渡益を計算する決りになっているからです(所得税法57条の3)。

たとえば、1ドル=110円のときに100万ドル(1億1000万円)で買っていた外国不動産を1ドル=136円の際、100万ドル(1億3600万円)で現金化した場合、代金以外の取得費用や譲渡費用の加減算を除けば、ざっと差益は2600万円になるわけです。

これは、外貨建で不動産を現金化し代金は円転せず為替差益を実現していなくても、このような計算になるのです。

最近の国税不服審判所の税金紛争事例でも、外国の不動産を譲渡して代金をすぐに円転せずに持っていたケースで、税務署から申告漏れを指摘され、争いになった事例があります。納税者側は、代金等を円転していないのだから、為替差益は実現していないため「円換算して課税することは未実現の利益に課税することになり不当である」と主張しました。

しかし国税不服審判所は「日本円に交換済みであるか否かにかかわらず、同法(上記の所得税法)の規定に従って、(問題の)各取引については、(問題の)各取引を行った時における為替相場により円換算して譲渡所得の金額を計算すべき」として、納税者の言い分を退けています(令和4年1月12日)。

[ 遠藤 純一 ]

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