Topics
TACTトピックス

会葬者に配った商品券は葬式費用にならず 最近の裁決事例から

2021.07.26

会葬者らに配布した3,000円の商品券が、葬式費用になるか、それとも葬式費用ではない「香典返し費用」となるのかで、トラブルになった事例がありました(国税不服審判所令和3年1月20日裁決)。

葬式費用とは、相続税法基本通達13-4によると次のように例示されています。
(1)葬式若しくは葬送に際し、又はこれらの前において、埋葬、火葬、納骨又は遺がい若しくは遺骨の回送その他に要した費用(仮葬式と本葬式とを行うものにあっては、その両者の費用)
(2)葬式に際し、施与した金品で、被相続人の職業、財産その他の事情に照らして相当程度と認められるものに要した費用
(3)(1)又は(2)に掲げるもののほか、葬式の前後に生じた出費で通常葬式に伴うものと認められるもの
(4) 死体の捜索又は死体若しくは遺骨の運搬に要した費用。

一方、葬式費用でないものとしては、相続税法基本通達13-5で次のように例示されています。
(1)香典返戻費用
(2)墓碑及び墓地の買入費並びに墓地の借入料
(3)法会に要する費用
(4)医学上又は裁判上の特別の処置に要した費用

争いとなったのは、通夜・葬儀で、香典を提出した参列者らに会葬礼状とともに渡した約190万円分の商品券。納税者は葬式費用になるとして相続税の申告をしたところ、税務署から否認されたといいます。そこで納税者は国税不服審判所に審査請求し、「香典返しは半返しを目安とする社会通念があるが、この葬儀等では香典の金額を確認することなく、一律3, 000円分が渡されている」などとして、相続税法基本通達13-4の(3)の「葬式の前後に生じた出費で通常葬式に伴うものと認められるもの」に該当すると主張しました。

国税不服審判所は「相続税法においては、(中略)葬式費用自体の意義についての定義規定が置かれておらず、何が葬式費用に当たるかについては、個々の事案について社会通念に照らして判断すべきこととなる」としながらも、上記の相続税法基本通達13-4、13-5の取扱いは相当としました。

そのうえで国税不服審判所は事実関係について「葬儀等の会場においては、受付に香典が提出された際に、本件商品券のうちから受領した香典の件数に対応した組数がそれぞれ参列者に渡されていたものと認められる。(中略)本件被相続人の白宅等において弔問客からの香典や郵送された香典を受領した場合にも本件商品券の一部が使用されていたものと認められる。これら商品券の使用状況は、葬儀等の際に香典の受領に対して香典の金額に関係なく一律に行う一般的な香典返しの場合と特に変わるところはない」とし、香典返しであるとして相続税の計算上控除できる葬式費用ではないと結論付けています。

[ 遠藤 純一 ]

当サイトに掲載の文章等の無断転載を禁じます。
全ての著作権は税理士法人タクトコンサルティングに帰属します。
無断使用、無断転載が発覚した場合は法的措置をとらせていただきます。