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取引相場のない株式の物納は今後減少か?

2021.05.31

取引相場のない株式そのものを相続税の納税に充てる「物納」は、直近の令和元年度においてわずか1件の申請があったものの、許可されていなかったことがわかりました(国税庁まとめ)。
物納とは、相続税を分割払いである延納によっても納められない場合に、税務署長の許可により相続財産で納めることが認められる相続税納付の特例です。

下記のデータは令和元年4月1日から翌年3月末日までの1年間のもの。それによると、相続税を現金で納付ができないことから、相続財産である非上場の自社株によって物納申請された件数は3件、申請額は、合計で1869万円余りでした。

今後は、平成30年4月から、所定の非上場株式会社の全株式を対象に納税猶予割合が100%となった「非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例」が施行されたこともあって、取引相場のない株式の物納の申請件数は、上記特例が適用される向こう10年ほどの間、減少するのかも知れません。

繰越金額新規申請件数申請金額
H27 9401万円 3 24億3984万円
H28 24億3984万円 2 1601億4809万円
H29 0 3 1億1464万円
H30 0 1 63億2974万円
R1 0 3 1869万円

これに対し事務処理状況によると、申請された合計3件中、物納が許可されたのは0件でした。

処理件数許可金額
H27 1 0
H28 5 1610億6934万円
H29 3 1億1464万円
H30 1 63億2974万円
R1 3 0

ちなみに有価証券の物納については、平成29年度税制改正により平成29年4月1日から、相続税の物納に充てることができる財産の順位について、株式、社債及び証券投資信託等の受益証券のうち金融商品取引所に上場されているもの等が第1順位とされました。また、物納財産の範囲に、新たに投資証券等のうち金融商品取引所に上場されているもの等が加えられ有価証券の物納の間口が広がっています。

[ 遠藤 純一 ]

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