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コインパーキングへの土地貸付は「駐車場業」にあらず 東京地裁、個人事業税で東京都の課税取消し

2021.03.29

東京地裁は個人事業税で異例判決を下しました(令和3年3月10日)。

争いの発端は、資産家がコインパーキングを運営する不動産業者に駐車台数10台分の土地を貸していたことです。不動産業者がいわば土地をまた貸しして時間貸で駐車場業を運営する仕組みで、資産家自身は事業にタッチしていませんでした。

東京都は駐車場の場所を提供しているだけでも個人事業税の課税対象の「駐車場業」に該当するとして平成28年分からの3年分を追徴しました。具体的には総務省の都道府県に対する地方税の技術的助言にあたる「地方税法の施行に関する取扱いについて(道府県税関係 )」(平成22年4月1日付総税都第16号)にある次の内容①を前提として独自に策定した事務提要➁を基に「駐車場業」と認定したのです。

①駐車場業とは、対価の取得を目的として、自動車の駐車のための場所を提供する事業をいうものであること。なお、建築物である駐車場を除き、駐車台数が10台以上である場合には、駐車場業と認定すべきものであること。
➁賃貸人が駐車施設を何ら施さず、更地を一括して貸し付けている場合で、賃借人が自ら駐車場所として使用している場合又は賃借人が当該土地を用いて駐車場事業を営んでいる場合には、当該土地の貸付けは、駐車場所の提供とみなし、認定すべきものとする。

東京地裁は、「駐車場業」の認定基準について地方税法に一般的な定義規定が置かれていないため、現行の事務提要の取扱いにとらわれず、過去の最高裁判決や駐車場法など社会通念から「駐車場業」とは何かを追究しました。まず、「事業」について「事業とは自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務をいうもの」と過去の最高裁判決から引用。次に駐車場については駐車場法2条1号、2号から自動車の駐車のための施設としたうえで「駐車場業」について「対価の取得を目的として自動車の駐車のための場所を提供する業務を自己の計算と危険において独立して反復継続して行うものであることを要する」としました。

東京地裁は、この観点から、Aさんに当てはめて、次のように認定しました。

ア、土地は、貸付先の業者が自己の駐車場として使用するためではなく、業者の責任において募集した第三者に対し駐車場として利用させることを前提に土地を貸し付けたこと
イ、資産家は、利用者との間の契約や管理業務に関与していないこと (経営リスクは負わないこと)
ウ、駐車場の稼働状況に関わらず業者から月額一定の賃料を受け取る契約であること(そのため稼働が増えても収入は増えないデメリットがあること)

このため東京地裁は、業者が運営する駐車場事業の場所として「資産家は土地を定額で貸付けているに過ぎないから「対価の取得を目的として自動車の駐車のための場所を提供する業務を自己の計算と危険において、独立して反復継続して行うものである」と評価することはできない。従って資産家は駐車場業を行うものに該当しない」とし、東京都の課税の取消を言い渡しています。

[ 遠藤 純一 ]

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