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相続税申告遅れた「正当な理由」めぐり争い 被相続人の妹が勝手に引出した預金は申告対象

2021.02.22

病気などで高齢の親の介護等をするときにお金がかかります。まして離婚などで親が一人になっていた場合、事情はもっと複雑になります。そんな場面で、介護を受ける親の兄弟姉妹と子の間でお金をめぐるトラブルも発生することがしばしばあります。今回は、そんな土壌に根差した税金紛争の話を紹介します(国税不服審判所令和2年6月17日裁決)。

この事例は被相続人Aさんが老人ホームに入所後平成29年6月ごろ死亡して開始した相続の話です。

相続人は子のBさんで財産調査すると、財産管理の権限がないのにAさんの妹Cさんが見舞いにうかがう際などでAさんの預金約4,600万円(本件金員)を引き出していたことが発覚。Cさんは、Aさんから贈与を受けたと主張したため、Bさんは専門家に相談したところ「贈与の立証がなされれば返還請求は困難だが立証されえなければ請求は可能になる」といわれ、訴訟も視野に返還の催告をして争うことにしました。

その結果、Aさんのために使われたお金以外について不当利得返還請求で2,700万円余りを返還する和解が成立。Bさんは和解後の平成31年2月27日、「正当な理由」があるとして相続税の期限後申告をしました。 

ところが、税務署は無申告加算税を課さない「正当な理由」は認められないとして無申告加算税を賦課決定したため税金紛争になったものです。

Bさんは、Aさんに係る相続税の法定申告期限時には、Cさんが引出したAさんの預金はCさんが贈与を受けたと主張しており、不当利得返還請求権は確定してないと主張していました。
これに対し国税不服審判所は、無申告加算税を課さない「正当な理由」について「期限内申告書が提出されなかったことについて、例えば、災害、交通や通信の途絶等、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、(中略)なお、納税者に無申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当」と通則法第66条第1項ただし書の考え方を示しました。そのうえで国税不服審判所は以下の認定等から「正当な理由」は認められないと判断しています。

  • Bは合理的根拠に基づいて、Cが本件金員を権限なく引き出しており、被相続人がCに対し本件金員に係る不当利得返還請求権を有していたことを前提に、催告をしたと認められる。
  • Bは、本件金員に係る不当利得返還請求権があることを把握していたか、少なくとも把握することが十分可能であったものといえる。
  • 不当利得返還請求権を相続財産に含まれないと判断したというのであれば、それは、Bの主観的な事情によるものであり、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があるとは認められない。

[ 遠藤 純一 ]

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