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鉄道の騒音で宅地につき10%評価減が認められた事例

2020.12.23

相続した宅地について鉄道の騒音がひどかったことから、その宅地が利用価値の著しく低下している宅地として、相続人が10%の評価減を求めて審査請求に及んだ事例がありました。国税不服審判所は令和2年6月2日、10%の評価減を認める裁決を下していたことがわかりました。

利用価値が著しく低下している宅地は取扱いで10%の評価減が認められています。この取扱いは、付近にある他の宅地の利用状況からみて、その宅地の利用価値が著しく低下していると認められる場合、その宅地について利用価値が低下していないものとして評価した場合の価額から、利用価値が低下していると認められる部分の面積に対応する価額の10%を乗じて計算した金額を控除した価額によって評価するというものです。

ただし路線価、固定資産税評価額または倍率が、利用価値の著しく低下している状況を考慮して付されている場合にはこの取扱いはありません。具体的には、次のケースで取り扱われます。

①道路より高い位置にある宅地または低い 位置にある宅地でその付近にある宅地に比べて著しく高低差のあるもの
②地盤に甚だしい凹凸のある宅地
③震動の甚だしい宅地
④上記①から③までに掲げる宅地以外の宅地で、騒音、日照阻害、臭気、忌み等により、その取引金額に影響を受けると認められるもの

裁決書によると相続人は騒音の測定を行いました。測定は、在来鉄道騒音指針及び平成27年10月に環境省が定めた「在来鉄道騒音測定マニュアル」における鉄道騒音の測定方法等にある程度準拠したものでした。これが決め手になったようです。

国税不服審判所は、概ね次のような認定をしました。

  1. 相続人による騒音の測定方法の方法が、騒音に関する公的基準の測定方法に完全の準拠したものではないものの、不合理な測定方法とまではいえず、その測定結果には一定の信用性を認めることができること
  2. 15年前に公式に行われた騒音測定結果と比べ、騒音のレベルに有意な変化をもたらすような事情はなかったと認められこと
  3. 路線価に騒音の要因がしんしゃくされていないこと
  4. 土地の周囲には、防音壁などの騒音防止措置は施されてなく、列車走行により相当程度の騒音が日常的に発生していたと認められること
  5. 土地の所在する市町村等では、騒音により宅地の固定資産税評価で軌道中心から30m以内で最高10%の所要の減額補正がされており、問題の宅地全体について取引金額が影響を受けていると認められること

こうしたことから国税不服審判所は、問題の宅地について騒音により利用価値が著しく低下している宅地として10%減額して評価すべきものと認めています。

[ 遠藤 純一 ]

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