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評価通達6の適用事案 東京地裁 鑑定評価で更正した税務署の処分を支持

2020.11.25

相続直前に15億円の賃貸住宅を15億円のローンで購入し相続税対策を行い、財産評価基本通達に基づき約4億8千円と評価して申告したところ、税務署から賃貸住宅の鑑定評価額10億4千万円との間に大きな乖離があり、特別な事情があると認められるとして相続税につき鑑定評価額で更正処分をされて争いになった事例の裁判がありました。

東京地裁は先ごろ、税務署の処分を支持する判決を下しました(令和2年11月12日判決)。
判決のポイントは次の通りです。

  • 争点は相続開始時における不動産の時価(評価通達の定めによらない評価方法により不動産の時価を算定することが許されるか否か)。
  • 相続税法22条で相続財産につき時価評価することが規定、実務では納税者の便宜、公平性の担保のため財産評価基本通達による画一的な評価方法が採用されている。ただし同通達の形式的適用で評価上弊害が明かな「特別な事情」がある場合には、同通達の評価方法以外の合理的な評価方法の採用することも許されると解される。
  • 問題の賃貸住宅につき通達評価額と鑑定評価額を比較すると、その2分の1に達しておらず、金額としても5億円以上の著しいかい離が生じている。
  • 相続開始時の約2か月前である平成25年7月25日に本件被相続人自身が本件不動産を購入した際の価額である本件売買価額は、鑑定評価額を上回る15億円であって、本件通達評価額と本件売買価額との間には更に著しいかい離が発生している。
  • この鑑定評価の手法が、不適切であるとする原告らの主張に理由がなく、他にその手法が不適切であるとする事情が認められないことからすれば、鑑定評価額は、本件不動産の客観的な交換価値を示すものとして合理性を有する。
  • 通達評価額と鑑定評価額との間に上記のような著しいかい離が生じており、これによって課税額に大幅な差異が生じていること自体、通達評価額によって時価を算定することが適切でないことをうかがわせるものということができる。

[ 遠藤 純一 ]

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