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両親から住まいを相続後に譲渡した場合の空き家特例の注意点

2020.10.26

親が亡くなって空き家になった実家を相続した子が売る場合に適用できる優遇税制として、「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」(以下、空き家特例といいます。)があります。この特例の適用をめぐり、両親からそれぞれ、家屋と土地を相続して譲渡したケースでトラブルになった事例が最近明らかになりました(令和元年6月24日裁決)。

裁決書によると、納税者Aさんが相続により、父から居住用家屋を、母から家屋の敷地を順次取得し、家屋の取壊しをした後の敷地を譲渡した際、この特例を適用して確定申告したといいます。ところが税務署が、父からの家屋の相続後、母がその家屋に住んでいたので、特例の適用要件を充たさないとして否認したという事例です。

この特例は、空き家の実家を譲渡したとき、所定の要件を満たす場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除するというものです。適用対象は「相続開始の直前まで被相続人が住んでいた居住用家屋とその敷地である土地等(借地権等を含む)」です。

ただし①家屋が区分所有建築物でないこと、②昭和56年5月31日以前に建築されたものであること(旧耐震基準)、③相続開始の直前まで被相続人以外に居住する人がいなかったことの3つの要件を満たすことが必要です。

税務署は上記③の要件を充たさないとして否認したわけです。しかしAさんは不満です。

Aさんはこの特例の規定(措法35③)の「「相続」については、同一の相続に限る旨の明文の規定がないことから、家屋及び土地を同→の相続により取得していない場合であっても、いずれも相続により取得しているのであるから、同項に規定する相続による取得」として要件を充たすと考えて、最終的に審査請求に及んだものです。

これに対し、国税不服審判所は、仮にAさんのように「父から家屋を、母から土地を、いずれも相続により取得したことが、同法に規定する相続による取得に該当すると解釈したとしても、上記③の要件を充たさない」から適用はないと判断しています。

[ 遠藤 純一 ]

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