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相続時精算課税 既に支払っていた贈与税の還付ができる場合の申告期限

2020.10.12

相続時精算課税制度の適用を受けて財産を母親からもらって贈与税を納めていた人の還付申告の時期が問題になった裁決がありました。

裁決によると、相続時精算課税制度の適用を受け母親から生前贈与を受けていたAさんは、平成25年の母の相続に際して相続税がかからなかったため、申告期限から5年を経過した後の平成30年11月になって還付申告したといいます。ところが税務署は申告期限を経過しており還付金請求権は時効により消滅しているとAさんに連絡し、還付をしませんでした。
Aさんはこれを不服として審査請求の及んだという事件です。

相続時精算課税制度とは、その年の1月1日現在で60歳以上の父母・祖父母である直系尊属から、20歳以上の子・孫へ贈与がある場合に、贈与した人と財産をもらった人の組み合わせごとに選択できる制度。税負担は贈与額2500万円までは特別控除により事実上贈与税が課税されず、それを超える金額の贈与には20%の税率で課税されます。その見返りとして、この組み合わせで直系尊属である父母等の相続が開始した場合には、相続税の計算上相続時精算課税制度でもらっていた財産を相続財産に加算し、相続税が算出される場合にはこの相続税から支払い済みの贈与税を引いて精算する仕組みです。従って、相続時精算課税制度で贈与した人からの相続で相続税が0の場合、生前に財産をもらっていた人が支払っていた贈与税の還付を受けることができます。

国税不服審判所は、ます、相続税法基本通達27-8では相続時精算課税制度の適用者にかかる還付申告について「相続開始の日の翌日から起算して5年を経過する日まで提出することができるのであるから留意する」とされていることについて、還付金等に係る国に対する請求権の消滅時効が、「その請求をすることができる日から5年間行使しないことによって時効により消滅すると規定している国税通則法74条に沿う」ものとして上記通達の適法性を認めました。そのうえで、Aさんの還付金請求権について、母親の相続開始日から5年を経過しているため消滅していると認定し、Aさんの請求を認めませんでした。

なお、この事件は裁判になっており、令和2年3月10日に相続時精算課税制度に係る還付金に関し、国税通則法74条の「その請求をすることができる日」は、相続開始の日と解すべき」との司法判断が示されています(現在この事件は控訴されています)。

[ 遠藤 純一 ]

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