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データで見る最近の相続税調査の動向

2020.08.31

平成30事務年度の資産税事務処理状況表によると、直近の相続税の税務調査は、課税価格1億円未満のクラスに対する調査で成果が上がっていることが分かりました。平成30事務年度とは平成30年7月1日から令和元年6月30日までの期間のことです。

それによると、全国の実地調査件数は1万2,463件で、前年度比0.9%減少でした。しかし課税価格1億円クラスに対する件数は2,738件と前年度比8.1%増加、特に5千万円未満クラスでは238件と絶対数は少な
いものの、前年度比17.7%増となっています。

これに伴い、見つかった申告漏れの金額(増差課税価格)は、1億円未満クラスで約936億円で、前年度比26%増加となったほか、5千万円未満クラスでは絶対的な金額は少ないものの約67億円と前年度比61.8%増加を記録しています。

これを裏付けるように税務調査の日数についても、1億円未満クラスは2万9241日と前年度比11.7%増やされており、見つかった申告漏れ(増差課税価格)の調査日1日当たりの金額も1億円未満クラスで約
320万円となっていて、1億円以上のクラスに対する税務調査の同様の金額を抑えて、見つかった申告漏れの調査日1日当たりの金額が最も高くなっている状況です。税務当局にとって、ある意味、調査効率の
良いクラスになっているわけですね。

また、納税者が財産隠し等をした場合に課税される重加算税が課税されたケースは1億円未満のクラスで前年度比39.1%増の509件に上っていることも分かりました。

こうしたことから、相続税の基礎控除引下げに伴う課税対象者のすそ野の広がりを受け、税務当局サイドで税務調査の対象を広げている姿勢が浮かび上がってきたと言えそうです。

[ 遠藤 純一 ]

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