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借家人の相続に伴う契約解除で家主が建物取壊しその費用は必要経費になるか

2020.08.24

賃貸不動産を相続した人が、賃借人の死亡に伴いその相続人から賃貸借契約解除の申出を受けて契約解除し、すぐさま建物を取り壊したケースで、①その取壊費用が、不動産所得の計算上、必要経費として認められるかどうか、②取壊し後、更地から駐車場として活用するまでの2年程度のブランク中の固定資産税・都市計画税が必要経費になるかどうかが争われた事例がありました(国税不服審判所平成26年12月9日)。

国税不服審判所は、①の取壊費用については、必要経費と認めました。理由は次の通りです。

ア、賃貸借契約終了後速やかに本件建物の取壊しを実行したことが認められ、他方、本件賃貸借契約終了後に本件建物が家事用に転用された事実や、本件建物の取壊し後に本件土地を譲渡する計画があったなどの事実は認められないこと。

イ、「建物賃貸業においては、建物の取得、賃借人の募集、賃借人への貸付け及び建物の取壊し・廃棄までが事業の一連の通常の流れであって、建物の取壊し費用は、建物賃貸業を行う上で通常発生する費用であるといえることに加え、賃貸借契約期間中に事業用資産である建物の取壊し・廃棄を行うことは不可能であることからすると、当該建物が家事用に転用されたなどの事情がない限り、賃貸借契約終了後の建物の取壊し・廃棄は、いわば建物に係る貸付業務の残務処理的な行為であるというべき」、したがって取壊費用は「建物に係る貸付業務と直接関係し、かつ、当該業務の遂行上必要なものである」。

しかし②の固定資産税等は必要経費と認めませんでした。その理由は次の通りです。

ウ、不動産業者に対して、建物の取壊し後、土地の新たな賃借人の選定及び管理を依頼し不動産業者がこれを了承した事実が認められるものの、不動産の相続人は、賃借人の選定条件や管理方法についての具体的な指示をしておらず、不動産業者が、本件土地の利用計画等を提案したり、賃借人の募集に関して具体的な行動を起こしたりしたことはなかったこと。

エ、取壊し後の土地は、2年間、固定資産税等の納税通知書の交付を受けた時点で、貸付けの用に供されておらず、また、近い将来において確実に貸付けの用に供されるものと考えられるような客観的な状態にあったとは認められないから、固定資産税等は、各年分の不動産所得を生ずべき業務について生じた費用とは認められない。

[ 遠藤 純一 ]

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