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借地人の建物の取壊費用を地主が負担して税金トラブルになったケース

2020.08.17

土地の賃貸借契約の解除した場合には、借地人は借地人の建物を取り壊して土地を明け渡すことになります。ところが、借地人に資力がない場合はどうなるでしょうか?最終的に地主が負担して土地を更地にするほかなさそうです。問題は、この取壊費用が地主さんの不動産所得の計算上、必要経費になるかどうかという点です。ここでは、取壊しに至る手続きが不動産所得を生ずべき業務の範囲に入るかどうか、借地人に資力がないかどうかが決め手になるようです。

今回、紹介するのは、地主が負担した建物の収去(取壊し)費用が不動産所得の計算上、必要経費になるかどうかで争われた税金トラブルの話です。具体的には相続放棄された建物の取壊費用が問題になったケースです(国税不服審判所、令和元年9月20日裁決)。成り行きは次の通りです。

  1. 未払い地代もあった借地人の相続開始(平成24年10月)に伴い、その相続人全員が相続放棄をした。
  2. 亡くなった借地人の財産は、相続財産法人に移行(民法951条)。
  3. 地主は平成25年8月、管轄の家庭裁判所に借地人の相続財産管理人の選任の申立てを行い(民法952条)、費用約100万円を予納した。同年9月管理人が選任された。
  4. 地主は、平成25年10月、未払賃料の1週間以内の支払い催告とともに、支払いなきときは土地の賃貸借契約解除の意思表示の書面を相続財産管理人に送る。同月、土地の賃貸借契約は解除。
  5. 地主は相続財産法人を相手に、管轄の裁判所に対し賃貸住宅である建物の収去、損害金支払い等を求め提訴。
  6. 地主は、平成27年4月、建物の借家人の立退き、建物収去などにつき相続財産法人と和解が成立。
  7. 地主は和解条項通りに建物が収去されなかったので、同年12月までに裁判所の建物収去の代執行、土地明け渡しの強制執行を申立て、翌年3月までに執行を完了。取壊費用は約650万円。

税務上問題になったのはこの取壊費用です。国税不服審判所は、借地人の死亡後、建物収去にいたる訴訟手続き、代執行により建物の取壊しを実行し、土地の明け渡しまでが不動産所得を生ずる業務といえ、求償しても回収が見込めない状況にあったので、建物収去費用は不動産所得を生ずべき業務の遂行上必要な費用になる、と認めています。

[ 遠藤 純一 ]

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