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1月1日売買でも、売主に固定資産税等がかかる場合

2020.08.03

固定資産税・都市計画税は、毎年1月1日における所有者、課税客体となる土地や建物などの現況で、課税されるかどうかが決まります。この1月1日のことを賦課期日といいますが、所有者、つまりこの日に登記簿などで不動産の名義人となっている人が納税義務者となる決まりです。

では、1月1日時点で売買をした場合、売主が納税義務者となるのか、それとも買主が納税義務者となるのか、気になるところです。最近このような問題で争いとなった裁決事例がありました(東京都令和2年1月21日)。

売主Aさんは、延べ床面積約1,900㎡の建物をB社に1月1日に売り、Aさんを義務者とし、B社を権利者とする所有権移転の登記申請をしました。ところが所管の登記所は1月8日に申請を受け付け、登記原因を1月1日売買としていました。

東京都の課税庁はAさんが1月1日時点で登記名義人だったことから、Aさんに建物の固定資産税・都市計画税を賦課しました。しかしAさんはこれを不服として審査請求に及んだものです。

審理した東京都は1月1日時点の所有者に課税されること、「所有者」とは登記簿等に登記等されている者であること等の税法上の規定を確認のうえ、福岡地方裁判所昭和56年4月23日判決を引用し、「一月一日現在登記簿上に所有者として登記されている者は、真実の権利関係の如何にかかわらず、それだけで当該年度の固定資産の納税義務を負うというべき」と見解を述べたうえ、あてはめでは、Aさんに固定資産税・都市計画税を賦課したことに違法・不当な点はないと判断しています。

ところで、不動産の売買では、買主から売主へ、物件引き渡し日などを境に、それ以後の固定資産税や都市計画税を日割り計算して精算する取引慣行が広く行われています。年の途中の売買取引なら、通常は売主が税法上、固定資産税や都市計画税の納税義務者としての地位を占めているため、このような精算が行われています。今回のAさんの場合も、1月1日時点で売買したとはいえ、名目上精算金を受け取ることになります。これは、売買代金の一部としての扱いをうけることになるため、所得税や消費税などでは注意が必要です。

[ 遠藤 純一 ]

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