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「相続についてのお尋ね」の記載漏れは財産隠しにならないとした裁決事例

2020.07.27

相続が開始すると、税務署から「相続税の申告等についての御案内」と「相続についてのお尋ね」が相続人のもとに届けられることがあります。
この「お尋ね」文書は、納税者に税務署への提出をお願いしている文書です。最近、この文書に記載のなかった相続財産があったことから「お尋ね」文書で相続人が嘘をついたとして、税務署が重加算税の賦課決定をしたことを巡り、争いになった裁決事例がありました(国税不服審判所令和元年12月18日)。

審理した国税不服審判所はまず、重加算税制度について「納税者が期限内申告書を提出しないことについて隠蔽又は仮装という不正手段を用いていた場合に、無申告加算税よりも重い行政上の制裁を科することによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適正な徴税の実現を確保しようとするもの」と整理。その賦課にあたっては「納税者が期限内申告書の提出をしなかったこと自体が隠蔽又は仮装に当たるというだけでは足りず、それとは別に、隠蔽又は仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせて期限内申告書の提出をしなかったことを要する」とした一方、「納税者が、当初から課税標準等及び税額等を申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかったような場合」にも賦課要件を充たすとの見解を示しました。

その上で、国税不服審判所は「お尋ね」文書について「その記載すべき内容や提出すること自体も法定されているものではなく、飽くまでも税務署が納税者に対し任意の提出を求める性質のもの」と認め、「お尋ね文書の内容が事実と異なるということのみをもって、直ちに請求人(相続人)がお尋ね文書に意図的に虚偽の記載をしてこれを提出したとまで認めることはできない」などと判断して相続人への重加算税の賦課を取消しています。

[ 遠藤 純一 ]

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