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調整区域にある雑種地の相続税評価で争い 比準すべき土地を宅地としたケース

2020.07.13

相続した市街化調整区域内に所在する雑種地に関する納税者の相続税申告に対し、税務署がその雑種地は宅地の価額に比準して評価すべきとして更正したことから、相続人側が比準すべきは農地の価額だと主張して争いになった裁決が明らかになりました(国税不服審判所、令和元年7月24日)。

雑種地の相続税評価は、「原則として、その雑種地と状況が類似する付近の土地(以下「比準土地」という。)について評価通達の定めるところにより評価した1㎡当たりの価額を基とし、比準土地とその雑種地との位置、形状等の条件の差を考慮して評定した価額に、その雑種地の地積を乗じて計算した金額によって評価する」ことになっています(財産評価基本通達82)。また実務においては、市街化調整区域の雑種地について比準土地を宅地として評価する場合、建物の建築制限に係るしんしゃく割合(減価率)を、原則として建物の建築が禁止されている場合には 50 %などとされています。

問題の雑種地は、市街化区域境界から少なくとも150m離れた市街化調整区域の2,000㎡弱の土地で、幅員7.5mの市道に36m接しており、高速道のインターチェンジからも比較的近く、フットサルコートとして貸し付けられていたものです。相続開始10年前には農地が多かったものの、相続開始時点では農地以外への転用が進行している土地柄でした。

争点は、比準すべき地目を宅地とするか農地とするかです。

国税不服審判所(以下、審判所という。)は、問題の雑種地の比準土地は、その周囲の状況を十分考慮した上で個別に判定することとしました。
あてはめでは、比準土地は宅地と判断すべきとしてその理由を次のように列挙しています。

1、市街化区域に近接していること、2、交通の利便性に優れていること、3、周圏では農地から農地以外への転用が進行しており、一部宅地がみられること、4、問題の雑種地がフットサルコートの施設の利用を目的として賃貸され、整備されていること。

加えて審判所は、開発規制のある調整区域であるため建物が立ち並ぶまでに至っていないものの、「農地が最有効使用であることを前提として土地の価額が形成されている地域とは認められない」としたうえで、建築物を建築することができない点については、「しんしゃく割合を50%とする減額を行うことによって考慮されている」としています。

[ 遠藤 純一 ]

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