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相続税の土地評価で裁決 控除すべき土壌汚染浄化費用は見積金額の80%とした事例

2020.07.06

土地の相続税評価で、控除すべき土壌汚染の浄化費用について、負担した実額2,560万円の80%か、公正な見積金額5,130万円の80%かのどちらを採用すべきかが争点となった裁決事例が明らかになりました。

この事案は、およそ2,500㎡の土地を相続した人が、遺産分割協議の成立後、その土地をマンションデベロッパーA社に譲渡する際、指定調査機関による土壌汚染状況調査で特定有害物質が見つかったことから、その浄化費用の扱いが土地の相続税評価の取扱い上、問題に浮上したものです。

土壌汚染浄化費用の扱いは、相続税の土地評価において、土壌汚染がないとした場合の土地の評価額から、土壌汚染の浄化費用に相当する金額等を控除することとされています(国税庁「土壌汚染地の評価等の考え方について(情報)」平成16年7月5日)。また、控除する金額は、土壌汚染の浄化費用に相当する金額は、相続税評価額のレベルに合わせて見積額の80%相当額とすることとされています。

さて、裁決書によると、土地の譲渡契約上、土地代金の残金は、A社の方で、土壌汚染等がなかったことが確認された後支払うこと、土壌汚染が見つかった場合には相続人の責任と負担において土壌汚染を解決することとされていました。これを前提にA社が指定調査機関に調査を依頼したところ、土壌汚染が見つかったということです。

この際、指定調査機関は、土壌汚染対策工事費用5,130万円とする見積書をA社に出していました。A社は、マンション建築工事と重複する工事部分を除き、汚染土壌の運搬・処分を業者に依頼、その費用として2,560万円を支払いました。

これに伴い、相続人とA社は、土壌汚染浄化費用が2,560万円であること、代金の残金を控除した金額を相続人がA社に支払うこととする覚書を交わしていました。

これと並行して相続人に対する相続税の調査が行われ、この場面で相続税の土地評価上、土壌汚染浄化費用の扱いで、控除すべきは実額の80%か、見積金額の80%かで争いとなったということです。

国税不服審判所は、財産評価基本通達で、相続財産の評価に当たっては、その財産の価額に影響を及ぼすべき全ての事情を考慮することとされ、課税実務においては、土壌汚染の浄化費用相当額を控除して評価することが認められていることを前提に、実額及び見積金額について次のように総括しました。

1、実額2,560万円について 土壌汚染対策工事費用の総額ではなく、土壌汚染対策工事を本件建物の建築工事と並行して行うことを前提とした場合における限定的な金額と認められるから、本件土地に係る土壌汚染の浄化費用相当額として本件土地の評価に用いるのは相当でない

2、見積金額5,130万円について 建物の建築工事と並行して行われることを前提とした場合における限定的な土壌汚染対策工事費用の金額ではなく、一般的な土壌汚染対策工事費用の総額であると認められる

こうしたことから、国税不服審判所は「土地を評価するに際し控除すべき土壌汚染の浄化費用の金額は、51,300,000円の80%相当額とすることが相当」と結論づけています。

[ 遠藤 純一 ]

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