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最高裁、過去から引きずる建物の評価誤りによる 払い過ぎ固定資産税の国家賠償で画期的判決

2020.04.20

昭和58年に初めて行われたビルの固定資産税評価等に誤りがあったことから、その後の各年度において過大な固定資産税等が課されたなどとして、ビルを所有する納税者が、課税庁を相手に平成25年に起こした固定資産税等の過納金の損害賠償を求める国家賠償請求の裁判で、最高裁は令和2年3月24日、画期的判決を下しました。

争点は、納税者の請求が、損害賠償請求権ができる期間(除斥期間)を経過した請求なのかどうか、その起算点である「不法行為の時」がいつであるかです。

最高裁は、「家屋の評価の誤りに基づき、ある年度の固定資産税等の税額が過大に決定されたことによる損害賠償請求権の除斥期間は、当該年度の固定資産税等に係る賦課決定がされ所有者に納税通知書が交付された時から進行するものと解するのが相当」として、原審の一部を破棄し、各年度の固定資産税等の賦課決定に係る納税通知書の交付の時につきそれぞれ除斥期間が経過したか否か、除斥期間が経過していない場合におけるその年度の損害額等について更に審理を尽くさせるため差し戻す判
決を言い渡しました。

建物の固定資産税評価額は、建物を新築するとしたらいくらになるかを求めて、築後年数に応じた減価償却をするイメージで算定されます。具体的には建物の構造や設備などの所定の部分について評点数をつけて積算し、建築後の年数に応じた経年減点補正率と評価の年の評点1点当たりの金額を乗じて評価額を求めることになります。なお、初めて評価が行われた以後の3年ごとの固定資産税評価の見直しでは、以前に部分別に建物を評価し積算していた評点の合計に、評価替えの年の再建築補正率等を利用して補正することになっています。その結果、最初の評価に誤りがあると以後の評価はそれをひきずることになります。

原審では、当初の建物評価に誤りがあることは認めましたが、除斥期間の起算点である不法行為の時については、遅くとも当初の評価が行われた年の昭和58年6月30日としていました。

建物の固定資産税評価の過去の評価誤りについては、固定資産評価の審査申出を通じて、過去の評価の誤りが評価替えの年の評価に影響を及ぼす場合には建築当初の再建築費評点数の算出に誤りがあることを納税者が主張立証すれば、評価の是正ができる場合があることは、すでに裁判上も明らかになっていました(東京高裁平成25年4月16日判決)。

[ 遠藤 純一 ]

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