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土地の使用貸借でよくある税金トラブル 争点は、支払われた金銭等が対価性あるかどうか

2020.04.13

相続人が親から借りた土地について、借地権があるのか、それとも使用貸借で借地権価額は0なのか。相続の現場では、しばしばこんな問題が持ち上がります。借地権付きならば、相続する土地は「底地」となり、相続税が安くなるからです。

しかし、親子間で地代のやり取りがあっても、税務署から「地代としての対価性がないから、使用貸借だ」と認定されて、相続税を増額更正されるケースが少なくありません。最近でもそんな税金トラブルがありました(国税不服審判所裁決令和元年9月17日裁決)。

裁決書によると、問題になった土地は2つ。長男と、長女の夫が被相続人から借りていた土地です。土地を借りるにあたり契約書を交わし、賃貸借としていましたが、当初は無償(長男)又は固定資産税等の負担(長女の夫)のみでした。しかし平成19年になって固定資産税等の税負担より高い金額を払うようになっていました。ただ、借地するにあたり権利金の授受はありませんでした。

こうした中、相続が開始し、相続人は借地権があるものとして相続税の申告をしたところ、平成30年に税務署から「問題の土地は借地権の目的とはなっていない」として相続税の増額更正を受けました。このため、相続人は「相続開始の年は固定資産税等の税負担より高い地代を払っているのだから借地権がある」として審査請求に及んだものです。

国税不服審判所(以下、審判所という。)は、土地貸借契約について「賃貸借契約であるか使用貸借契約であるかは、その貸借が対価を伴うものであるか否かにより決せられるべきものであり、交付された現金等がある場合にそれが対価性を有するか否かは、当事者の主観的意思を無視はできないものの、これにとらわれることなく客観的に判断すべきものと解され、具体的には、その契約における権利金の有無、支払地代の水準、貸主と借主との関係及びその契約の経緯や趣旨を総合的に考慮して判断すべき」と判断基準を提示。あてはめで審判所は、1、権利金の授受がないこと、2、支払われた金銭は、事実上固定資産税等の額と同程度であること、3、その金銭は、被相続人である親が、近隣で他人に駐車場として貸し付けていた土地の地代よりも低廉であることを指摘し、金銭が支払われたときに「賃貸借契約」に変更されたとみることはできないと認定しました。

また、審判所はこれに関連する使用貸借通達について、「土地の公租公課に相当する金額以下の金額の授受があるにすぎないものは使用貸借に該当する旨を例示したものであって、 支払地代の水準が土地の公租公課の額を上回る場合に、直ちにその土地の貸借関係が賃貸借になることを定めたものとは認められない」として相続人の言い分を退けています。

[ 遠藤 純一 ]

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