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審判所、青色専従者給与の「高すぎる部分」で裁決 判定は類似同業専従者給与比準方式

2020.04.06

個人事業主の歯科医が自身の配偶者で歯科衛生士に支払った青色専従者給与につき、税務署が労務対価として相当であると認められる金額を超える金額があるとして、その金額を必要経費として認めず追徴したことから、歯科医側がその取消しを求めて争いとなった裁決事例が明らかになりました(国税不服審判所裁決、令和元年9月6日)。

この事案は、青色申告を承認申請と、青色専事業従者給与の届出をしていた歯科の開業医のもと、歯科衛生士の資格を有する配偶者が①歯科衛生士業務、②窓口受付事務、③経理事務、④レセプト請求に関する業務、⑤使用人の給与計算事務、⑥銀行手続に関する業務等の業務を行っていたことに関し、平成26年分、平成28年分に支払われた青色専従者給与が問題になったもの。

審理した審判所は、まず所得税法(所法56①9)の規定「青色申告の承認を受けている事業者の場合は、同法第56条の規定にかかわらず、親族で専らその居住者の営む同条の事業に従事するもの(青色事業専従者)が当該事業から支払を受けた給与の金額のうち、政令で定める状況に照らしその労務の対価として相当であると認められるものは必要経費に算入することができる」と、これを受けた政令(所令164①)で「その状況として、①労務に従事した期間、労務の性質及びその提供の程度、②その事業に従事する他の使用人が支払を受ける給与の状況及び類似同業者に従事する者が支払を受ける給与の状況並びに③その事業の種類及び規模並びにその収益の状況」が掲げられていることを確認。

これは、労務の対価として相当と認められる部分に限って事業所得の金額の計算上、必要経費として算入することを認めたものと解されるとしました。

そのうえで審判所は、「類似同業専従者給与比準方式」を採用し、①一定の地域で歯科医業を営む個人事業者であること、②青色申告者で所得税の青色申告決算書を提出している者であること、③歯科医業に係る年間の売上金額が請求人の売上金額の2分の1以上、2倍以下の者であること、④青色事業専従者が、歯科衛生士の資格を有する配偶者のみの者であることのほか、各年につき年聞を通じて青色事業専従者給与を支払っていること、年の中途において開廃業、休業又は業態を変更しておらず、また、申告に対する更正処分等が行われ不服申立て、訴訟が係属している者は除くという条件を追加して、類似同業者を選定し比較対象の専従者給与の平均額を算出、これを専従者給与の適正給与相当額とし、これを超える部分の金額につき必要経費算入を否認しました。

この裁決は、税務署が行った「類似同業専従者給与比準方式」による選定につき一部適正化したことに伴い、原処分を一部取消すものとなっています。

[ 遠藤 純一 ]

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