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相続税対策で関連会社に売った株式の時価で判決 最高裁、法令に妥当しない通達解釈を否定

2020.03.30

最高裁は令和2年3月24日、相続税対策で同族会社のオーナーが関連会社に売った同族会社株式の売買価額について、譲受人が少数株主となるためなどの理由で配当還元価額になるとした納税者に対し、税務当局が「低額譲渡」にあたるとして更正処分等したことから争われていた事案に対し、東京高裁の納税者勝訴判決を破棄、さらに審理をさせるため東京高裁に差戻す判決を言い渡しました。

争点は、低額譲渡の判定にあたり、その基礎となる株式譲渡時における株式価額の評価方法として、所得税基本通達 59-6の(1)の条件下における評価通達 188 の議決権割合の判定方法などです。

最高裁は、過去の判例を下敷きに「譲渡所得に対する課税においては、資産の譲渡は課税の機会にすぎず、その時点において所有者である譲渡人の下に生じている増加益に対して課税されることとなるところ、所得税法59条1項は、同項各号に掲げる事由により譲渡所得の基因となる資産の移転があった場合に当該資産についてその時点において生じている増加益の全部又は一部に対して課税できなくなる事態を防止するため、「その時における価額」に相当する金額により資産の譲渡があったものとみなすこととしたものと解される」と示しました。

そして最高裁は「その時における価額」につき「所得税基本通達59-6は、譲渡所得の基因となった資産が取引相場のない株式である場合には、同通達59-6の(1)~(4)によることを条件に評価通達の例により算定した価額とする旨を定める。評価通達は、相続税及び贈与税の課税における財産の評価に関するものである」のに対し、「株式の譲渡に係る譲渡所得に対する課税においては、当該譲渡における譲受人の会社への支配力の程度は、譲渡人の下に生じている増加益の額に影響を及ぼすものではないのであって、前記の譲渡所得に対する課税の趣旨に照らせば、譲渡人の会社への支配力の程度に応じた評価方法を用いるべきものと解される」としました。
最終的には「少数株主に該当するか否かについても当該株式を譲渡した株主について判断すべき」として、東京高裁判決の納税者勝訴部分を破棄しています。

なお判決の補足では国税庁通達についてわかりにくいとの指摘、改善を促す意見が述べられています。

[ 遠藤 純一 ]

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