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土地の所有権を争う裁判で負けたのに固定資産税が課税されたケース

2020.03.16

土地の所有権を巡り争いがあったにもかかわらず、都市計画道路の区域にかかる土地(約330㎡)に固定資産税が課税されたケースで、トラブルになった事案が最近ありました(東京都裁決令和元年11月22日)。

これは、登記簿上名義人であるAさんが、平成28年に土地の占有者から「時効取得」を原因とする土地の所有権移転登記手続きを求める裁判を起こされたことが発端の事案です。この裁判は控訴審までもつれ込みましたが、最終的には平成30年6月に、土地が都市計画道路のため収用された平成30年1月12日において、占有者がこの土地の所有者だったことを確認する和解が成立しました。

この間、課税庁は、平成30年1月1日の賦課期日においてAさんが土地の登記簿に登記されている所有者だったため、この年の6月に、平成30年度分の固定資産税としてAさんへ納税通知書を送付したことから税金トラブルが勃発。

Aさんは、自分が「土地の所有者ではなかったことは裁判上の和解によって確定している」として賦課処分の取消を求めて東京都に対し審査請求に至りました。

審理した東京都は諮問した審査会の答申を受け、Aさんの言い分を退けました。その理由は次の通りです。

1、固定資産税を規定する地方税法では「所有者」とは、土地については、登記簿又は土地補充課税台帳に所有者として登記又は登録されている者を
いうとされており、法は、固定資産税等の納税義務者につき、いわゆる台帳課税主義を採用している。

2、台帳課税主義は「徴税の事務処理の便宜上、納税義務者の判定にあたっては、画一的形式的に登記簿上の所有名義人を所有者として取り扱えば足りるとしたものであり、(中略)賦課期日である毎年1月1日現在登記簿上に所有者として登記されている者は、真実の権利関係の如何にかかわらず、それだけで当該年度の固定資産の納税義務を負うというべきである」(福岡地方裁判所昭和56年4月23日判決)。

[ 遠藤 純一 ]

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