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近隣に葬儀場があっても土地評価は下がらず東京地裁、固定資産税評価で判決

2020.02.25

市街地の土地(本件土地)の固定資産税評価が、近隣に葬祭場があることを減価要因として考慮されていないから高すぎるとして評価額の10%の引下げを求めて、その土地を保有する納税者が管轄の市役所を相手に起こした裁判の判決が、東京地裁でありました(令和2年2月6日)。

東京地裁は、火葬場とは異なり「葬祭場の存在が、本件土地を含むその近隣地域の土地の客観的交換価値を減少させるものとまではいえない」として、納税者の言い分を退けました。

問題になったのは、納税者保有の土地の西側に葬祭場があったこと。この施設には葬祭場に火葬場は併設されていませんでした。納税者は平成30年度の評価額に対し評価減を求めて審査申出を行いましたが、認められず、平成31年4月に提訴に踏み切ったものです。

争点は、「本件土地の近隣に葬祭場が存在することを減価要因として考慮していないことが、本件登録価格の決定の違法事由となるか否か」です。

原告である納税者らは「近隣の住民は、当初、葬祭場が設営されることに反対しており、長年心理的負担を抱きながら我慢してきた。(中略)死体安置所の存在,読経や仏具の鐘の音が漏れ聞こえる状況は、本件土地上の建物に生活する者にとって、大きな精神的負担を強いる」と主張しました。
ただ、葬儀場がどのようにこの区域の土地の時価に影響があるか、具体的な立証はなかったようです。

東京地裁は、「一般に、葬祭場は、葬儀等の実施を主たる目的とする施設であって、このような施設に対して不安感や嫌悪感を抱くか否かは、個々人の主観によるところが大きいため、葬祭場の存在を減価要因として取り扱うものとしていないことには合理性がある」と説示し、結論として10%減価を認めませんでした。

[ 遠藤 純一 ]

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