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個人事業税の「駐車場業」の認定にご用心

2020.02.03

空地を有効利用するために、駐車場として他人に貸すことはよく行われることです。所得税の場合は、自己の責任において自動車や自転車を保管するための管理者等を設置して料金を収受する事業を営むと、その所得は、不動産所得ではなく、事業所得又は雑所得に区分されます。それ以外の単なる土地等の貸付の所得は不動産所得に区分されることになっています(所基通27-2)。

一方、個人事業税の場合、対価の取得を目的として、「自動車の駐車のための場所を提供する」事業は、個人事業税の対象である第一種事業に該当し、課税標準に5%の税率で課税されます(地法72の2⑧、地方税法の施行に関する取扱いについて(道府県税関係、以下、取扱通知)第3章・第1節第2・2の1・(6))。また「駐車台数が10台以上である場合には、駐車場業と認定すべきもの」(同取扱通知)とされており、所得税とは異なる点には注意が必要です。

最近、個人事業税の駐車場業の認定でトラブルがありました(東京都裁決、令和元年8月22日)。

裁決書によると、納税者Aさんは、2か所合計約350㎡の土地にアスファルトを敷き、コインパーキングを営むB社に貸付ており、その収益を平成28年分と平成29年分の所得税確定申告では不動産所得として申告し、アスファルトの減価償却費を経費としていました。

都税事務所は平成30年11月までに税務署申告書等を閲覧し、アスファルトの減価償却費の計上を見出し、航空写真等でAさんが貸付けているコインパーキングの駐車場台数が10台であることを確認、「駐車場業」にあたるとして個人事業税を賦課しました。

これに対しAさんは「駐車場を経営するB社に賃貸しているが、私(請求人)自身が利用者から駐車場料金を徴収する経営は行っていない」、B社が駐車場業を営んでおり、アスファルト敷を施したのは、B社の要望に沿ったものにすぎず、Aさんは駐車場運営には一切関与していないとして、賦課処分取消を求めて東京都に対する行政不服審査で争うことになったものです。

東京都は次のような審査会の答申を受けて、Aさんの請求を退けています。

1、審査会は次の通り法令を確認しました。
地方税法、取扱通知を受けて定められた東京都の事務提要の規定によると、駐車場業の定義について「駐車場業とは、対価の取得を目的として、自動車の駐車のための場所を提供する事業をいう」とされていること。次に掲げる基準に該当する場合は駐場業に該当すること。( 1 )建築物である駐車場( 2 )寄託を受けて保管行為を行う駐車場( 3 )上記( 1 )( 2 )以外で駐車台数が10台以上である駐車場。

また「賃貸人が駐車施設を何ら施さず、更地を一括して貸し付けている場合で、賃借人が自ら駐車場所として使用している場合又は賃借人が当該土地を用いて駐車場事業を営んでいる場合には、当該土地の貸付けは、駐車場所の提供とみなし、認定すべきもの」とされていること。

2、審査会の事実関係の認定は次の通りです。
Aさんの土地は駐車可能台数が10台のコインパーキングとしてB会社により運営されていること。アスファルト敷が施され賃貸料収入を得るための経費としてアスファルト敷設に係る費用を、それぞれ減価償却費として計上していること。

こうしたことから審査会は、「Aさんは、対価の取得を目的として、自動車の駐車のための場所(本件土地)を提供しているものであり、そのほか、取扱通知及び事務提要の定める駐車場業の認定基準を満たしている」と結論付けました。

Aさんの「利用者から駐車場料金を徴収する経営は行っていない」旨の主張について、審査会は「実際に自動車を駐車するものから直接対価を取得することを目的とすることは認定の要件ではない」と切捨てています。

[ 遠藤 純一 ]

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